朝、病院の駐車場に着いて、エンジンを切ったあとの静けさ。

ふと「このまま、誰にも何も言わずに遠くへ行けたらな」と思って、スマホの画面を見つめる。

SNSのアイコンを長押しして、全部消してしまいたい。
そんな、いわゆる「人間関係リセット症候群」のような衝動に駆られていたのは、10年前の私でした。

当時の私は、地域の総合病院で医療事務として働き始めてまだ1年目。
右も左もわからない中で、一番苦しかったのはレセプトの書き方でも、複雑な公費の知識でもありませんでした。

それは、スタッフ間の「仲の悪さ」と、その間に入って顔色をうかがい続ける日々だったのです。

「言葉」で解決しようとして、余計に深みにはまった失敗談

私のいた職場は、ベテランの事務さんと、少し気難しい医師が、常に冷戦状態でした。
窓口の空気はいつもピリピリしていて、誰かがため息をつけば、それが自分への不満のように聞こえてしまう。

「私がもっと明るく振る舞えば、場の空気が和らぐかも」

そう思って、無理に高いトーンで挨拶をしたり、機嫌の悪いスタッフの愚痴を「わかります」と聞き続けたりしていました。

でも、それは大きな間違いだったんです。

良かれと思ってかけた「言葉」は、相手にとっては火に油を注ぐこともあれば、逆に私のエネルギーを吸い取るストローになってしまいました。

誰かと誰かの仲を取り持とうとすればするほど、私の心にはささくれが増えていく。
ついには「もう、誰とも関わりたくない。リセットしたい」という極限状態まで追い詰められてしまったのでした。

誰かの不機嫌は、あなたの荷物ではないという事実

その後、採用担当という立場も経験し、多くの職場の人間模様を見てきて、ようやく気づいたことがあります。

それは「大人の不機嫌は、その人自身の問題である」ということです。

誰かが怒っている。
誰かと誰かがいがみ合っている。

それは、彼らが自分の感情をコントロールできていないだけであって、新人のあなたや、板挟みになっているあなたが責任を感じる必要は、これっぽっちもないんですよね。

当時の私が本当に欲しかったのは、「頑張れ」とか「仲良くしてね」という言葉ではありませんでした。

「今、あの二人ピリついてるから、君は奥でカルテの整理でもしてなよ」
そんな風に、物理的な「行動」で助けてくれる存在でした。

言葉で状況を変えようとするのは、もうおしまいにしませんか。
医療現場という特殊な閉鎖空間で自分を守るためには、言葉よりも「具体的な行動」が、何よりの盾になります。

今日から試せる、自分を守るための3つのアクション

もし今、あなたが職場の空気に押しつぶされそうなら、以下の3つの行動を試してみてください。

✔️ 1. 「大義名分」のある中座をルーティン化する

空気が重いと感じたら、1分でもいいのでその場を離れます。仕事に紐づいた理由をいくつか持っておくのがコツです。

・「少し備品の在庫チェックをしてきます」
・「あちらの棚のカルテ、整理してきてもいいですか」
・「郵便物の確認に行ってきます」

これらは立派な業務ですから、誰も文句は言えません。
物理的に距離を置くことで、脳が「戦わなくていいモード」に切り替わり、リセット願望を鎮めてくれます。

✔️ 2. 「仕事の鎧」を意識的に着る

職場でのあなたを、自分自身ではなく「医療事務という役割を演じている役者」だと考えてみるのはどうでしょうか。

感情を込めて寄り添うのではなく、丁寧なマニュアル通りの対応に徹する。
不機嫌な人には「承知いたしました」とだけ返し、余計な感情のキャッチボールをしない。

淡々と作業をこなす姿は、周りから見れば「仕事ができる人」に映りますし、あなた自身は心の中まで土足で踏み込まれずに済みます。

✔️ 3. 退勤後の「強制リセット」を決めておく

職場を出た瞬間から、あなたは自由です。
仕事中に我慢している分、帰り道で意図的にスイッチを切ります。

・車の中では一番好きな音楽を大音量でかける
・コンビニで、普段は買わないちょっといいアイスを買う
・家に着いたらスマホを別の部屋に置き、15分だけデジタルデトックスをする

「SNSを全消しする」という大きなリセットの代わりに、こうした「小さなリセット」を日常に散りばめていくのが、長く続ける秘訣かもしれません。

それでも限界な時は、「環境を変える準備」をしてもいい

アクションを試しても、それでも職場の空気が耐えられなくて、毎朝涙がこぼれそうになる時があるかもしれません。

そんな時は、「ここから逃げる準備」を始めてもいいんです。

採用担当として履歴書を見てきたからこそ言えますが、環境を変えることは決して「逃げ」ではありません。
自分を守るための、逃げです。

過去に心がすり減っていた時、私にとって一番効果のあったお守りは「求人サイトを眺めること」でした。

「あ、ここならスタッフの人数が多くて風通しが良さそう」
「未経験歓迎の場所、意外とたくさんあるんだな」

そうやって外の世界を知るだけで、「いざとなれば、いつでもここから離れられる」という安心感が生まれて、翌朝の足取りが少しだけ軽くなったりします。

今すぐ転職する気がなくても、心の避難所として外の選択肢を覗いてみるのは、自分を守るための大切な一歩。

医療事務の求人が見やすくて、私が採用側としても信頼しているサイトをそっと置いておきます。
温かい飲み物でも飲みながら、パラパラと雑誌をめくる感覚で眺めてみてくださいね。

▶︎ 【プロフで、少しだけ外の世界を覗いてみる】

今夜は、明日のシフトのことなんて考えず、自分をたくさん甘やかしてあげてほしいな。
焦らず一歩ずつ、自分のペースで進んでいきたいですね。
隣で見守っている私がいることを、忘れないでください。

仲良くならなくても、仕事は回る

「職場はみんな仲良くすべき」
この言葉は、時として残酷な呪縛になります。

でも実際は、仲が良くなくても、プロとして最低限の連携さえ取れていれば、患者さんに適切な医療を提供することは可能です。

仲良くなろうと無理をして、結果として仕事が手につかなくなったり、あなた自身が壊れてしまったりする方が、よっぽど悲しいことだと思うんです。

冷たいと言われるのを恐れなくて大丈夫。
あなたが取っている距離は、あなたがこれからも医療事務として、誰かの力になり続けるための「優しさの境界線」なのだから。

今夜は、明日のシフトのことなんて考えず、自分をたくさん甘やかしてあげてくださいね。

一歩ずつ、あなたのペースで。
隣で見守っている私がいることを、忘れないでください。