「先輩の言っていることが半分もわからない」「ミスが続いて職場に申し訳ない」そんな中で、もう向いていないのかもしれないと感じる瞬間もあると思います。

医療事務として入職したばかりの時期、こんな気持ちになるのは珍しくありません。

この記事を読むと、こんなことがわかりますよ。

  • 新人がつらい時期に訪れる「3ヶ月・6ヶ月・1年」の典型カーブ
  • しんどさを生んでいる5つの構造的な理由
  • 1日を少しだけ軽くする3つの小さなセルフケア
  • 「もう辞めたい」と思った時に立ち止まる判断軸
  • 一人で抱えないための公的相談窓口
  • 教える側から見た「使えない」の正体と、効いた教え方3つ

結論から言うと、新人時代のしんどさは、自分のせいではなく、覚える量と職場の構造から自然に生まれる現象です。ピークは3ヶ月目前後、薄まり始めるのが半年、ふっと軽くなるのが1年目の終わりです。

今やること今が入職から何ヶ月目かを数えて、下のカーブのどこにいるかを見る。
▼ つらい時期のカーブを見る


医療事務の新人だった、10年前の私のこと

私が総合病院に入職した初日の夜。駐車場で車を止めたまま、ハンドルを握って、しばらく動けませんでした。

誰かにひどいことを言われたわけではありません。先輩の「それ、さっき言ったよね」の一言が1日中頭の中で鳴っていて、家のドアを開ける気力が出なかっただけです。

朝6時起き、片道50kmの高速通勤。家に着く頃には夜も遅く、それでも翌朝にはまた、知らない言葉ばかりの現場に戻る。新人の頃は、その繰り返しでした。

あのとき誰かに言ってほしかった言葉が、一つだけありました。たった一言です。

「最初の3ヶ月は、できなくていいよ」

「頑張れ」でも「大丈夫」でもなく、ただ「できなくていい」と。新人時代のしんどさは気合いで消えるものではなく、これから書く構造から生まれます。

その正体がわかれば、自分を責める時間はずいぶん短くなるはずです。


医療事務の新人がつらい時期の典型カーブ|3ヶ月・6ヶ月・1年

医療事務10年以上、元採用担当として3年間多くの新人さんを見てきた経験から言うと、しんどさの波には共通したカーブがあります。

しんどさの山は2〜3ヶ月目。入職〜1ヶ月、2〜3ヶ月の山、4〜6ヶ月、7〜12ヶ月と進み、半年でぼんやり、1年で輪郭がはっきりしてくる

時期 しんどさの中身 体感
入職〜1ヶ月 知らない言葉のシャワーで頭が真っ白 帰宅後ぐったり
2〜3ヶ月目 同期との差が見え始め、ミスが続く ピーク。辞めたい気持ちが最も強い
4〜6ヶ月目 業務の全体像が薄っすら見える しんどいが、先が少し見える
7〜12ヶ月目 月末月初の流れが体に入る 「今ならわかる」が増える
1年経過後 後輩が入って自分が教える側に ふっと軽くなる瞬間が来る

ピークは2〜3ヶ月目。ここが山ですね。理由はシンプルで、入職直後の緊張感が薄れ、自分のミスや同期との差が見えてくる時期だからです。

「自分だけできていない」の錯覚が一番強くなる時期でもあります。

逆に言えば、ここを越えると視界が変わります。半年でぼんやり、1年で輪郭がはっきりする。1年続けば、しんどさの質が変わります。

時期 状態
入職〜3ヶ月 言葉が分からず、何を聞けばいいかも分からない
1年後 月末月初の流れが体に入り、後輩に教える側になる

しんどさを生んでいる5つの構造的な理由

「自分のせいで苦しい」と感じる人は多いです。無理もありません。けれど、医療事務の新人がつらい理由は、ほとんどが構造から来ています。

① 覚える単語の量が異常に多い

算定、査定、返戻、包括、点数表、公費、労災、主病、転帰、レセプト病名……。返戻は、審査で認められず差し戻されることです。初日から知らない言葉のシャワーが降ってきます。

一般的な事務職と比べると、覚える専門用語の数が桁違い。最初の数ヶ月でわからないのは当たり前で、覚えが悪いわけではありません。

② 業務範囲があいまい

受付・会計・電話・予約・備品発注・患者対応・レセプト点検。「これは誰の仕事?」というグレーゾーンが多く、結果として医療事務に流れてくる構造があります。

③ 月末月初に集中する波がある

毎月10日前後にレセプトの提出があり、月末月初は業務量がふくらみます。私がいた職場では、ふだんの数倍に感じる日もありました。

フロア全体がピリつくので、新人さんは「自分のせいで雰囲気が悪い」と誤解しがちですが、ほとんどは月の波が原因です。

④ ヒエラルキーが強い職場である

医師・看護師・薬剤師など専門職が並ぶ中で、医療事務は職種としての立場が下に置かれがちです。意見が言いにくい雰囲気が、ストレスを蓄積させます。

⑤ スマホが基本的に使えない

病院は個人情報の塊なので、業務中スマホは持ち込めません。一般職なら「ちょっと検索」で済むことが、医療事務では「メモ→夕方に質問」の手順が必要です。

情報アクセスの速度が他職種より遅い構造もしんどさの一因です。

この「メモして後で聞く」をうまく回すコツは、聞き方を決めておくこと。そのほうが楽です。

先輩が答えやすいタイミングと言い回しは、5月から使える確認フレーズ7選にまとめました。

元採用担当の本音新人さんから相談を受けるとき、まずこの5つの構造を見せます。「自分の能力の問題ではない」と知るだけで、表情が和らぐ方が多いです。


「自分は使えない」と感じる新人さんへ|元採用担当が見ていたのは伸びしろです

「同期はできているのに、自分だけ使えない」新人時代、そう思い込んでいた時期が私にもありました。

ただ、3年間、採用と新人教育に関わって、はっきり分かったことがあります。採用側が見ているのは、その日の成果ではなく「伸びしろ」のほうです。

そこは安心してください。入職して数ヶ月の人に、最初から戦力を期待する現場は、私が見てきた中ではほとんどありませんでした。むしろ、こんな点を見ています。

  • わからないことを、わからないままにしていないか
  • 同じミスを、次にどう減らそうとしているか
  • 一つずつでも、昨日より覚えようとしているか

つまり、今できるかどうかより、少しずつ前へ進もうとする姿勢のほうを見ています。これは現場で何十人もの新人さんを見てきた、正直な実感です。

「自分は使えない」と落ち込む時間は、できれば短いほうがいいです。その気持ちは、裏を返せば「ちゃんとやりたい」という真面目さの表れでもあります。

責める方向に力を使うより、目の前の1つを覚えることに使うほうが、結局いちばん早い。採用側にいた私は、そういう人がいちばん伸びると感じていました。

「同じミスを、次にどう減らすか」の部分。ここは根性ではなく、小さな仕組みで変わります。

私が新人時代に効いた具体策は、医療事務の新人がミスを減らす3つの仕事術にまとめています。

元採用担当の本音「今できる人」より「これから伸びそうな人」を選んでいました。最初の数ヶ月の出来不出来だけで、その人を判断したことは、一度もありません。


医療事務の新人が今日からできるセルフケア3つ

体系的な乗り越え方は記事末尾の有料note(¥1,980)にまとめていますが、ここでは今日の帰りから試せる小さなセルフケアを3つだけ紹介します。

どれも道具も時間もほぼ要りません。

① 退勤前にメモ帳の裏ページへ「今日できた1つ」を書く

新人時代の退勤時、頭の中は「今日できなかったこと」でいっぱいでした。1日を「今日できた1つ」で終わらせるだけで、翌朝の気の重さが少し和らぎます。

「今日、はじめて資格確認書のコピーを1人で取れた」で十分です。3ヶ月後に見返すと、「私、こんなところから始まったんだな」と思える瞬間が来ます。

② 家に帰ったら、仕事のことは1分だけにする

しんどい時期は、家族に仕事の愚痴を話し続けてしまいがちです。私もそうでした。でも、吐き出せば吐き出すほど、夜の時間まで病院のことで埋まってしまいます。

家に帰ったらまず白湯を飲んで、仕事のことは1分だけにする。「1分だけ聞いて」と家族に伝えておくのも効きます。

③ 月末月初の日程を紙の手帳に赤ペンで書く

スマホが使えないので、紙の手帳が相棒です。月末の20〜30日・月初の1〜10日を赤ペンで塗り、提出日の10日頃に◎マーク。

「あ、もうすぐ忙しい日だ」と先に知っているだけで、心の持ちようが違います。先輩のピリつきも、月の波が原因だと知っておくと、必要以上に自分を責めなくて済みます。


「もう辞めたい」と思った時に立ち止まる判断軸

しんどさのピーク、2〜3ヶ月目に「辞めたい」と思うのは自然なことですよ。ただ、その判断は感情の谷で下さない方がいいことが多いです。

状況 判断の目安
覚える量に圧倒されている 3ヶ月は様子を見る。多くの人が通る道
ミスが続いて自信を失っている 半年は様子を見る。手が動き始める時期
特定の先輩・上司との関係がしんどい まず別の窓口を作る
体調・睡眠に明確な変化が出ている 早めに離れる方向で動く
パワハラ・モラハラを感じる 即、公的窓口へ

体や心の調子に明確な変化が出ているなら、3ヶ月の壁を待つ必要はありません。それは構造の問題か、職場そのものの問題です。

職場そのものが原因だと感じる時は、医療事務の経験を持ったまま働き方を変える道もあります。

通勤や人間関係の負担を減らす選択肢は、医療事務のフルリモート求人事情に実体験から整理しました。


一人で抱えないための相談窓口

「誰に相談していいかわからない」時のために、公的な窓口を。名前を伏せたまま話せます。

こころの耳の電話は、受付時間が決まっています。

平日(月曜日~金曜日) 17:00~22:00(受付は21:50まで) / 土曜日・日曜日 10:00~16:00(受付は15:50まで)
(祝日、振替休日、年末年始(12月29日~1月3日)を除く)

出典:厚生労働省 こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」(2026年9月18日確認)

🔴 非通知では受けてもらえません。2026年1月に変わったところです。

利用者の皆さまの安全対策および受電状況改善のため、2026年1月より発信者番号を非通知とする電話をお受けしないこととなりました。発信者番号が非通知の設定をされている場合は、お手数をおかけしますが、電話番号の前に「186」をつけてダイヤルされるなど、発信者番号を通知したうえでおかけ直しください。

出典:同ページ(2026年9月18日確認)

番号は残りますが、話した中身が職場に伝わることはありません。選択肢を知っているだけで、心の余裕が変わります。


新人が「使えない」と感じた時|元採用担当が効いたと思う教え方3つ

ここまでは新人側のことでした。ここからは、教える側で読んでいる場合のこと。

同じことを何度も聞かれる。伝えたはずのことが、翌週にはまた振り出しに戻っている。指導する側にも、そういう時期はあります。

私も総合病院で新人教育に関わっていた頃、同じ気持ちになった日がありました。

採用と新人教育に3年関わって、見えたことが一つあります。

伸び悩んでいる時、原因が本人の能力だったことは、私が見てきた中ではあまりありませんでした。たいていは、メモが残っていないだけ。

① 何度も聞かれる時、責める前にメモを見る

メモが手元にない状態で説明を聞くと、その場では分かった気になります。ところが翌日には抜けている。真面目さの問題ではなく、記録の問題でした。

「さっき言ったよね」が口から出かかった時、私が代わりに使っていたのは、こんな一言です。

何度も聞かれた時の言い回し
「これ、メモに残ってる? 残ってなかったら、今から一緒に書こうか」

責める言い方をやめてみると、同じことを聞かれる回数のほうが減っていきました。

② 答えを先に言わない。背景を先に渡す

これがいちばん効いた気がします。

聞かれてもすぐには答えず、「どうしたらいいと思う?」と一度返す。そのうえで、なぜこの業務が必要なのかという背景を一緒に伝えます。

たとえば「資格の確認は毎回するもの」とだけ伝えると、忙しい日には省かれました。

「資格が切れていると請求が返ってきて、患者さまに後から請求し直すことになるから」まで伝えると、省かれなくなりましたね。

手順だけを渡すか、理由まで渡すか。その差は思っていたより大きいものでした。

背景まで渡す時の言い回し「やり方の前に、これが何のためにある作業か先に話してもいい?」

③ 答えだけを渡すと、応用がきかなくなる

②の裏返し。

急いでいる日ほど、答えだけ渡したくなります。そのほうが早く終わりますから。ただ、その教え方を続けた時期は、少し形の違うことが来ると、また止まってしまいました。

たとえば「この患者さまは1割です」とだけ答えると、次に2割の人が来た時に、また同じ質問が返ってきます。

「年齢と所得で決まるから、まず資格確認書のここを見る」まで渡してあれば、次は自分で判断できます。

考える時間を渡すほうが、その日は遅い。翌月には逆転している。私の実感としてはそうでした。

新人側で読んでいる場合も、この3つはそのまま使えます。聞きに行く前にメモを開く。答えをもらったら「なぜそうするのか」まで聞いてみる。

それだけで、次に同じことが来た時が少し楽になりますよ。


よくある質問(FAQ)

Q. 新人のつらさはいつまで続きますか?

ピークは2〜3ヶ月目で、半年で薄まり、1年で質が変わります。ただし職場環境や個人差があるので、目安として捉えてください。

Q. もう辞めたいです。今すぐ動いてもいいですか?

体調に明確な変化が出ているなら、3ヶ月の壁を待つ必要はありません。逆に「覚えることが多くてしんどい」が主な理由なら、3ヶ月は様子を見る価値があります。

判断は感情の谷で下さない方が安全です。

Q. 「向いていないのかも」と思い始めたら?

最初の3ヶ月でその感覚を持つ新人さんが、私が見てきた中ではほとんどでした。向き不向きの判断は、6ヶ月ほど経ってからで遅くありません。

覚えることが多すぎる時期は「判断できる状態」ではないからです。

ただし、眠れない・体調に出ているなら我慢のことではないので、先に環境を疑ってください。

Q. 相談する勇気が出ません

最初の一歩は「こころの耳」のメール相談がおすすめです。声を出さなくていいので、ハードルが低いです。職場の人に知られることもありません。

Q. 同期と比べて自分だけ覚えが遅い気がします

医療事務の習熟は3年で1サイクルです。1年目で全部できる人はいません。焦りは正常な反応ですが、比較の物差しが間違っていることが多いです。

Q. 残業が多くて体がもちません

最初の1〜2ヶ月は残業が増えがちです。ただし常態化しているなら、それは職場の問題の可能性があります。体を最優先にしてください。


つらい時期を短くするには

  1. 新人がつらい時期のピークは2〜3ヶ月目。半年で薄まり、1年で質が変わる
  2. しんどさは個人の能力ではなく、5つの構造から生まれている
  3. 小さなセルフケアと公的窓口を知っておくだけで、選択肢が広がる

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著者プロフィールゆう|医療事務10年以上・元採用担当・現フルリモート
総合病院で10年間医療事務を務め、元採用担当として多くの新人さんを見てきました。朝6時起き・片道50kmの高速通勤を7年間続けたあと、転職サービス経由でフルリモートへ転身。現在は算定業務をしながら3人の子どもを育てています。新人時代のしんどさを知っているからこそ、「折れないコツ」をお伝えしたいと思っています。仕事は人生の一部、自分を削ってまで頑張る場所ではありません。新人さんの肩の重さを少しでも軽くするために発信しています。
Instagram: @iryo_jimu

最終更新日:2026年6月20日