平日の夜、ふと時計を見たら20時を過ぎていた。

周りのスタッフはもう誰もいない。カタカタと自分のキーボードの音だけが、暗くなった事務所に響いていた。

書類を探して、言葉を考えて、患者さんに頭を下げて。気づいたら外は真っ暗。

「なんで私だけ、こんなに時間がかかるんだろう」

家に帰ったら、子どもたちはもう寝ている。LINEで妻から「お疲れさま。ごはんはあっためるだけだからね」。その一文だけで、涙が出そうになった日もありました。

医療事務の仕事を続けるなかで、いろんな仕組みを試してきました。それでも、自分の残業だけはずっと減らなかった時期があります。

正直に言います。私は長いあいだ、「頑張り方」を間違えていました

この記事では、当時の私を救ってくれた5つの仕組みを、今日から真似できる手順つきで書きます。

読み終わったその10分後から、ひとつ試せる内容にしました。特別な日だけじゃなく、ふつうの平日に使える話です。

スピードより、仕組みが先だった

これは、私の反省です。

「早くやればいい」「気合いで終わらせればいい」。ずっとそう思っていました。

でも本当に変わったのは、速くやるのをやめた瞬間でした。

速くやろうとするとミスが増える。ミスが増えると、直す時間で残業する。また同じ書類を探して、また時間を溶かす。

終わらないループの原因は、スピードじゃなく、仕組みがなかったことでした。

ある日、先輩にこう言われました。

「あなたは頑張ってる。でも、その頑張りが仕組みに乗ってないの」

その言葉に泣きそうになったのを、今でも覚えています。そこから少しずつ、私の場合は、1日2時間あった残業が30分以下まで減りました。あくまで私の職場・私のペースでの話です。それでも、同じ方向を試してもらう価値はあると思っています。

① 単語登録で「打つ時間」を消す

1日のうちで、同じ文章を何回タイピングしていますか。

最初にやってほしいのは「単語登録」です。とくに医療事務では、長くて、一発変換されない病名を登録すると効果が大きいです。

▼ 登録手順(Windowsの場合)

1. タスクバーの「あ」または「A」を右クリック
2. 「単語の追加」をクリック
3. 「単語」欄に変換後の文字、「よみ」欄にひらがな2〜4文字を入力
4. 「登録」をクリック

▼ 登録手順(Macの場合)

システム設定 → キーボード → ユーザ辞書 → 「+」で追加。

ここからが本題です。外来レセで頻出する病名を中心に、登録して効果が大きい10選を置いておきます。そのまま真似してOKです。

▼ 生活習慣病・内科系(外来で最頻出)

・「ほん」→「本態性高血圧症」
・「ししつ」→「脂質異常症」
・「こうこ」→「高コレステロール血症」
・「こうにょ」→「高尿酸血症」
・「にがた」→「2型糖尿病」

▼ 呼吸器・感染症系

・「きかん」→「気管支喘息」
・「じょうき」→「急性上気道炎」

▼ 消化器系

・「ぎゃく」→「逆流性食道炎」
・「かびん」→「過敏性腸症候群」

▼ 整形・運動器系

・「へんしつ」→「変形性膝関節症」

同じ要領で、勤務先で頻出する病名をどんどん足していけます。五十肩は「ごじゅう」→「肩関節周囲炎」、花粉症は「かふん」→「アレルギー性鼻炎」といった具合に。

10個だけ。設定は1回。私の場合は、1日30分の入力時間が消えました(※あくまで私の職場での体感値です)。

周りの先輩を見てきて気づいたことがあります。仕事が早い人ほど、「同じことを2回やらない仕組み」を持っていました。タイピングが速いのではなく、打つ回数そのものが少ないのです。

なお、本格的にやるなら無料の医療辞書「DMiME」(Google日本語入力用の医学用語辞書)や、ATOKの「医学辞書 for ATOK」を入れる方法もあります。毎日たくさん入力する人は、検討してみてください。

② 情報を取り出す時間をゼロにする

「あの書類、どこだっけ」。

この一言に、どれだけの時間を奪われてきたか。

コクヨが2017年に行った調査では、紙書類を探す時間は1日平均約20分、年間約80時間と公表されています。丸3日分が探し物に消えている計算です。

おすすめは、「使用頻度」で配置する3段ルール。

▼ 3段の置き場ルール

第1層(毎日使う):デスクの手元/PCのデスクトップ。例=電卓、印鑑、今日の予約表、よく使うマニュアル
第2層(週に数回):引き出し/フォルダ1階層目。例=請求書フォーマット、先月の申送り
第3層(月1回以下):キャビネット/フォルダ2階層目以降。例=年次資料、研修ノート、イレギュラーの手順書

さらに、PCフォルダの命名ルールを決めると探し物がもっと消えます。

「YYMMDD_内容_担当名」で統一する。たとえば「260415_請求書_山田」。
日付順に並ぶので、記憶より先に目でたどれます。

「整理」は気合いじゃない。設計です。一度決めてしまえば、後は「戻すだけ」。

③ 朝10分で、午後のバタバタを消す

朝に10分だけ、その日のタイムテーブルを書く。

紙でもPCのメモでもOK。私はいつも、A5サイズの付箋にこう書いていました。

▼ 朝10分テンプレート(そのまま真似OK)

① 今日の予約件数:__件(うち初診__件)
② 午前の優先タスク3つ:__/__/__
③ 午後の優先タスク3つ:__/__/__
④ イレギュラー想定:__(例:飛び込み3件、電話問い合わせ多め)
⑤ 今日のゴール:「__まで終わらせる」

所要10分。私の場合、午後のバタバタが嘘のように減りました

先輩や後輩の働き方を見てきて、ひとつ気づいたことがあります。残業の多い人と少ない人の差は、スキルじゃありませんでした。「朝の10分」があるか、ないか。たったそれだけでした。

気持ちの余裕は、準備からしか生まれない。私はそう思っています。

④ ショートカットキーは「3つ」だけでいい

全部覚える必要はありません。まずは3つ。

▼ 最初に覚える3つのキー

Ctrl + C(コピー):文字や表を選択してから
Ctrl + V(貼り付け):コピーした内容を貼り付け
Ctrl + Z(元に戻す):「しまった!」の直後に押す魔法のキー

医療事務の現場で、1日50回以上は使う操作です。マウスを動かす手間がなくなるだけで、私の場合、1日10分の節約になりました。

慣れてきたら、次の2つも仲間入り。

Ctrl + F(検索):長い文書から必要な情報を一瞬で見つける
Ctrl + S(保存):作業中、3分に1回押す習慣を

覚え方のコツは「毎日1つだけ、意識して使う」こと。今日はCtrl+Cだけ、明日はCtrl+V。1週間で全部体に入ります。

PCに振り回されるのではなく、PCを使いこなす側にまわる。その一歩目が、ショートカットでした。

⑤ 患者さんへの案内フレーズを「準備」しておく

患者さんと話す言葉を、毎回ゼロから考えていませんか。

私はシーン別に5つ、「自分の定型」を決めました。

▼ シーン別・案内フレーズ5選(そのまま使える)

受付時:「保険証のご確認をお願いします。変更がなければこのままお預かりしますね」
お待たせするとき:「現在10分ほどお待ちいただいております。お急ぎの方はお声がけください」
会計前(次回予約の案内):「次回のご予約はいかがなさいますか。ご希望の日時はございますか」
質問されたが即答できないとき:「確認いたしますので、少々お待ちいただけますか」
お見送り:「お気をつけてお帰りください。お大事になさってくださいね」

考えなくていい言葉を決めておくと、大事な言葉に集中できます

患者さんの目を見て、表情を見て、声をかけるゆとりができる。仕事術は、最終的には「人との関わり」のためにあると思います。

それでも大事なのは、「人」と向き合う時間

仕組みで時短ができると、気持ちにゆとりが生まれます。

以前の私は、窓口で怒鳴る患者さんに対して「なんで当たられるんだろう」と思っていました。

でもある日、声が荒かったおじさんに「今日はお身体の具合いかがですか」と声をかけたら、こう返ってきました。

「手術が怖くて昨晩眠れなかった」

怒っていた人が、急に小さくなった。あの瞬間は今でも頭に残っています。

仕組みで時間を作ると、人と向き合う時間が生まれる。仕事術は、効率化の先にある優しさのためにあると、今は思っています。

明日から、ひとつだけ始めてほしい

全部やろうとしなくていい。まずはこの3つから、どれか1つ。

単語登録を1つだけ追加する(5分):上の10個から好きなものを1つ
書類をひとつの場所にまとめる(10分):「毎日使う」だけ決める
明日の予約を今日確認する(3分):件数を数えるだけでいい

どれか1つでいい。

小さな仕組みが、毎日を静かに変えていきます

残業が当たり前の毎日は、あなたの頑張りが足りないからじゃありません。仕組みをまだ渡されていないだけです。

何年か前の自分に、この記事を渡してあげたい。「大丈夫、頑張り方を変えるだけで、毎日はちゃんと軽くなるよ」と。

もし同じ景色を見ている人がいたら、プロフィールに医療事務の時短まとめを置いています。よかったら覗いてみてください。

あなたの明日が、少しでも早く帰れる日になりますように。

※本文中の「1日30分削減」「残業が30分以下に」などの数字は、私の職場での体感値です。職場の状況により効果は変わります🙇

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