夕方18時。
電子カルテの画面にズラリと並ぶ「確認待ち」の患者リスト。

「お疲れ様です、〇〇先生。こちらの算定なのですが…」

医療事務として働き始めた頃、私はいつも、院内チャットやカルテのメッセージ機能で、できるだけ丁寧な長文を送っていました。
失礼のないように。機嫌を損ねないように。


でも、そのメッセージはいつも既読スルー。
ひどい時は未読のまま放置されます。

ようやく「〇〇でお願いします」と返信のポップアップが鳴るのは、すべての診療が終わった夜8時。

そこから自分の事務処理を始めるため、毎日の残業は確定。
待合室の電気が消えた後、ため息をつきながらブルーライトを浴びていました。


■ なぜ、画面越しの返信は遅いのか

なぜ、先生たちはメッセージの返信を後回しにするのか。

毎日の残業に限界を迎えたある日、診察室の様子を見ていて気づいた事実があります。
次々と患者をこなし、一日中カルテの画面と睨めっこしている先生たちに、長文のメッセージを処理する余力など残っていません。

例えるなら、フルマラソンを走り終えた直後の人に、「この書類の不備について、理由と対策をチャットで記述してください」とお願いしているようなもの。

どんなに丁寧な言葉遣いでも、パッと画面を見た瞬間に「うわ、文字が多い。後でやろう」と脳がシャットダウンしてしまいます。


相手が求めているのは、画面上の綺麗な敬語ではありません。
「考える手間の排除」です。


■ 記述式テストを、マークシート方式に変える

そこで私は、メッセージの送り方をガラッと変えました。
相手に「チャットで文章を打たせる」のをやめ、「1文字で返せる」ようにしたのです。

たとえば、月末のレセプト点検。
電子カルテ上で病名漏れを見つけた時、以前の私はこう送っていました。

✖️「先生、〇〇の検査を行っていますが、適応病名が漏れています。何の病名を追加すればよろしいでしょうか?ご確認お願いいたします。」

これを読んだ医師は、該当のカルテを開き、検査内容を確認し、病名を考え、キーボードで返信を打つという4つの工程を踏まなければなりません。
これでは後回しにされて当然です。


やり方を変えた後のメッセージは、こうです。

〇「レセプト病名『××』追加でOkですか? 【 YES / NO 】」

挨拶も、前置きも、丁寧な状況説明もすべて省きました。
結果はどうなったか。

送信した数分後には、秒で「YES」とだけ返信が来るようになりました。


■ 日常業務もすべて「コピペか1文字」に

これはレセプト点検だけでなく、日々の算定や処方依頼でも同じように使えます。

✖️「こちらの処置は、〇〇と××のどちらで算定しますか?」
〇「〇〇算定でOkですか? 【 YES / NO 】」

✖️「患者様から、いつものお薬だけ欲しいとご要望がありました。いかがいたしますか?」
〇「DO処方でOkですか? 【 YES / NO 】」

相手の選択肢を極限まで絞り、スタンプ感覚で答えられる状態にして送る。
たったこれだけで、驚くほど仕事のスピードが変わります。


顔色をうかがって丁寧な文章を打つより、相手が1秒で返信できる工夫をする。
気遣いの方向を「言葉の丁寧さ」から「相手の手間の削減」へ変える。

この小さなルールの変更だけで、私の月末の残業は一気に消滅しました。


もし今、昔の私と同じように、画面の「未読」を見つめながら夜のクリニックでため息をついている人がいるなら。

明日の朝、メッセージの送り方をほんの少し変えてみませんか。
自分の時間を守れるのは、自分だけです。


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