医療事務1年目のとき、毎日辞めたかった。
仕事が嫌だったんじゃない。人間関係がしんどすぎた。
厚労省の調査によると、医療・福祉業界の離職理由で「人間関係」は常に上位に入っている。女性の退職理由ではトップ。数字を見て「やっぱりそうだよな」と思った。
でも当時の僕は、それが「自分だけの問題」だと思い込んでいた。
聞いても怒られる、聞かなくても怒られる
先輩に質問するタイミングがわからない。忙しそうな顔を見て「今じゃないか」と引き下がる。でもわからないまま進めて、結局ミスをする。
「前も言ったよね」
この一言が、心臓をぎゅっと掴んでくる。
聞いたら怒られる。聞かなくても怒られる。どっちにしても怒られるなら、もう何もしたくなくなる。
朝、駐車場に着いてもしばらくエンジンを切れない日があった。別に泣いてたわけじゃない。ただ、体が動かなかった。
看護師との距離感がわからない
医療事務の人間関係で意外とキツいのが、看護師との関わりだった。
伝票の受け渡し、検査の案内、電話の取り次ぎ。毎日何度も接点がある。なのに、事務と看護師の間には見えない壁がある。
忙しい日にちょっとした確認をしただけで、あからさまに面倒そうな顔をされる。「そんなの自分で調べて」と返されて、頭が真っ白になったこともある。
医療事務は「病院のなかで一番立場が弱い」と感じる瞬間が、1年目には何度もあった。
ドクターのミスでも、患者さんに頭を下げるのは受付の自分。この構造的な理不尽に慣れるまで、相当な時間がかかった。
今ならわかる。看護師も余裕がなかっただけだ。でも当時の僕にはそう思える余裕すらなかった。
昼休みが一番つらい時間だった
仕事中よりもしんどかったのが、実は昼休みだった。
狭い休憩室で先輩たちと一緒に過ごす時間。誰もほとんど喋らない。スマホをいじるか、目を閉じているか。
話しかけていいのかわからない。かといって、ずっと黙っているのも気まずい。
1時間の昼休みが、1年目には3時間くらいに感じた。
後から思えば、昼休みにメモを見返したり、教わったことを整理する時間に使えばよかった。そうすれば「あの子、ちゃんとやってるな」という印象にもなるし、先輩から話しかけてもらえるきっかけにもなる。
ぼーっとスマホを見ていると、先輩もどう接していいかわからないらしい。
「いい人」を頑張るほど、都合よく使われた
当時の僕がやっていたこと。
笑顔を絶やさない。誰にでも丁寧に接する。頼まれたら絶対に断らない。
「こうすれば好かれるはず」と思ってた。全部やった。で、全部裏目に出た。
無理してニコニコしてると「あいつは何でもやってくれる」って都合よく使われるだけだった。
断れない僕に、雑用がどんどん積み上がっていく。本来の業務が回らなくなって、さらにミスが増える。ミスが増えるから、もっと頑張らなきゃと思って、もっと「いい人」をやる。
完全に悪循環だった。
あの頃の自分に言いたい。好かれようとすればするほど、自分がすり減るだけだよ、って。
味方は、一人でいい
じゃあどうすればよかったのか。
今ならわかる。全員に好かれようとしなくてよかった。
「この人になら聞ける」っていう人を一人だけ見つけて、その人との関係だけ大事にすればよかった。
全方位に気を遣うから疲れる。10人中10人に好かれようとするから、心がもたない。
でも10人の中にたった1人、「これ聞いていいですか」と言える人がいるだけで、出勤前の吐き気がちょっとだけ楽になる。
見つけ方のコツは、「質問したときに手を止めてくれる人」を探すこと。内容がどうこうじゃなくて、こっちを向いてくれるかどうか。それだけで十分。
好かれる人じゃなくて「反応が早い人」が信頼される
もうひとつ、あの頃知りたかったことがある。
人間関係がうまくいく人の共通点は「愛想がいい人」じゃなかった。
「反応が早い人」だった。
チャットや伝言の返事が早い。頼まれたことの着手が早い。「ありがとうございます」「すみません」を言うのが早い。
たったそれだけ。愛想じゃなくてスピード。
好かれようとしなくていい。「反応の速さ」だけ意識する。これが一番損しない人間関係のコツだと思う。
無理に仲良くなろうとしなくても、反応が早い人は「ちゃんとしてる」と思われる。信頼は、笑顔の量じゃなくてレスポンスの速さで積み上がる。
「自分だけが嫌われてる」は、たぶん勘違い
1年目の頃、僕はずっと「自分だけが嫌われてる」と思っていた。
先輩の返事がそっけない。目を合わせてくれない。質問すると面倒そうな顔をされる。
毎晩布団の中で「何が悪かったんだろう」と考えていた。
でもしばらくして気づいた。あの先輩、誰に対してもああだった。
忙しすぎて余裕がなかっただけ。別に僕のことを嫌いだったわけじゃなかった。
人間関係の悩みの多くは「自分だけが嫌われてる」という思い込みから始まる。つらくなったら一回だけ疑ってみてほしい。「もしかして、自分だけじゃないかも」って。
それでもダメなら、環境を変えていい
ここまで書いたことを全部やっても、どうしてもしんどい場合がある。
朝起きられない。食欲がない。日曜の夜に涙が出る。そういう状態が2週間以上続いているなら、それは根性の問題じゃない。
心が限界を超えているサインだから、そこは自分を責めないでほしい。
まずは職場の外に相談先を持つこと。家族や友人でもいいし、厚労省の「こころの耳」のような相談窓口もある。
それでも状況が変わらないなら、場所を変えるのも立派な選択肢だ。医療事務のスキルは他の病院やクリニックでも活かせる。「ここが全てじゃない」と知っているだけで、少し息がしやすくなる。
1年目の自分に伝えたいこと
今も医療事務を続けている。環境は変わったけど、人間関係の悩みがゼロになったわけじゃない。
でも、あの頃と決定的に違うのは「全員に好かれなくていい」と思えていること。
味方は一人でいい。好かれるより、反応を早くする。昼休みはメモを整理する時間にする。「自分だけが嫌われてる」と感じたら、一回だけ疑ってみる。
この4つを知っているだけで、あの頃の毎朝の吐き気は半分くらいになっていたと思う。
もし今、同じように苦しんでいる1年目の人がいたら。
大丈夫、全員に好かれなくても、仕事はちゃんと回る。
まずは明日、誰かの連絡にいつもより5分だけ早く返してみて。
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