「保険証、今日は持ってなくて」

そう言われた瞬間、10割ですね、と口が動きそうになりますよね。

この場面の順番を、総合病院で医療事務10年以上、元採用担当3年の私が整理しました。

✅ この記事でわかること
- 10割になるかどうかの分かれ目は、マイナンバーカードの有無
- カードがある時に、3割等で受付できる3つの道
- 前に来ている人なら、申立書を書いてもらわなくてよい場合があること
- カードも保険証もない時、通知が病院の判断に委ねている部分
- 資格が分からないまま、レセプトを出す方法

資格確認書を持ってこられた場合は、それで資格確認をして通常どおりの受付です。この記事は、それも手元にない場合の話。

先に答えをお伝えすると、分かれ目はマイナンバーカードを持っているかどうかです。カードがあれば3割等で受付できる道が通知に用意されています。

カードも保険証もない場合は、10割の請求が基本。ただし、そこにはただし書きもセットです。

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✅ この記事を書いた人
ゆう|3つの総合病院で医療事務10年以上|元採用担当3年|現フルリモート医療事務|3児パパ

患者様の前で黙ってしまう数秒を、まずなくす

新人さんが最初にきついのは、制度そのものより、この数秒。

何も持っていないと言われて、頭の中で「10割かな、でも」と考えている間、患者様はこちらの表情をじっと見ています。沈黙が長いほど、相手も身構えていきますよね。

だから、調べる前に声を出す。

💬 「今お調べします。分かり次第すぐお伝えします」

これだけで、調べる時間が生まれます。

このとき、時間と金額は言わないほうが安全です。「30秒ほど」と言った瞬間、相手は数え始めます。渡すのは次に何が起きるかだけ

そのほうが、あとで自分を守ります。

分かれ目は、マイナンバーカードを持っているか

10割かどうかの分かれ目。カードがあれば3割等の道がある、カードも保険証もなければ10割が基本

根拠は令和5年7月10日 保発第710001号

マイナンバーカードでオンライン資格確認ができない場面の取扱いを定めた通知です。

窓口負担の分かれ方はこうです。

患者様の持ち物 その日の窓口負担
資格確認書がある 通常どおりの自己負担分
カードはある(資格確認ができない) 申し立てた自己負担分(3割等)
カードも健康保険証もない 医療費の全額(10割)が基本

だから最初に聞くのは、保険証ではありません。

💬 「マイナンバーカードはお持ちですか」

ここが分かれ目です。順番に見ていきますね。

①カードはある|3割等で受付できる道が3つ

カードは持っているけれど、資格確認ができない。この時の道は3つです。

カードがある時の3つの道。マイナポータルの画面、健康保険証、被保険者資格申立書

通知の順番どおりに書きますね。

  1. マイナポータルの資格情報の画面を、スマホで提示してもらう
  2. 健康保険証を持っていれば、それで確認する
  3. どちらもなければ、被保険者資格申立書を書いてもらう

1と2は通知の2(1)、3は2(2)にあたります。どの道でも、その日の窓口負担は自己負担分(3割等)。10割にはなりません。

なお、厚生労働省の資格確認方法についてでは、資格情報のお知らせもカードとセットで提示するものとして案内されています。

単体では受診はできません。何らかの事情で資格確認を行えなかった場合に、マイナンバーカードとセットでご提示ください

お知らせだけを出された時の扱いは、資格確認書と資格情報のお知らせ|8月からの受付対応にまとめました。

カードは持っているのに読み取れない場面(顔認証が通らない、暗証番号が分からない)の手順は、マイナ保険証が読み取れない時の受付対応のほうが近いです。

前に来ている人なら、申立書を書いてもらわなくてよい場合があります

ここが、いちばん見落とされているところ。

前に来ている人の扱い。過去の受診歴、口頭で確認、申立書の提出があったものとして扱える

通知の2(2)には、こう書かれています。

なお、過去に当該医療機関等への受診歴等がある患者について、その時から資格情報が変わっていないことを口頭で確認し、被保険者資格申立書に記載すべき情報を把握できている場合には、被保険者資格申立書の提出があったものと取り扱って差し支えない

つまり、カルテに前回の情報が残っていて、変わっていないと口頭で確認できれば、用紙を書いてもらわずに済みます

聞くことは2つだけ。

  • 保険が変わっていないか(転職・退職・扶養から外れた、など)
  • 連絡先に変更はないか

💬 「前回いらしたときと、保険は変わっていませんか」

急いでいる患者様に用紙を差し出さずに済む場面が、実際はかなりあります。

申立書に書いてもらう項目と、負担割合が違っていた時

書いてもらう場合の項目は、通知に列挙されたとおりです。

被保険者資格申立書に書いてもらう項目。券面情報、連絡先、保険に関すること、負担割合

記入してもらうもの 中身
券面情報 氏名・生年月日・性別・住所
連絡先 電話番号など
保険に関すること 加入医療保険の種別・保険者名・事業所名
負担割合 一部負担金の割合など

原文は「可能な範囲で記入いただき」という書き方。全部埋まらなくても進められる作りです。

💬 「こちらの用紙にご記入いただけますか。分かる範囲で大丈夫です」

そしてもう1つ、受付が怖がるところ。患者様が自己申告した割合が、あとで違っていた場合です。

通知には、こうあります。

70歳以上等の患者について、患者の申立てに基づく割合で一部負担金を受領した場合、実際の負担割合が異なっていたとしても、負担割合相違によるレセプト返戻は行わないことを基本とする

申告どおりに受け取って割合が違っていても、それだけで返戻にはならないという扱い。

あとで割合の違いが確認された場合は、保険者から患者様へ返還請求等が行われる流れです。

ここを知っていると、聞き取りの手が止まらなくなります。

②カードも保険証もない|通知では10割が基本です

ここは正直にお伝えします。

カードも保険証もない場合。10割の請求が基本、ただし再診で身元が分かれば病院の判断で3割等も可能

通知の2(3)には、こう書かれています。

患者がマイナンバーカード又は健康保険証のいずれも持参していない場合や、有効な健康保険証の交付を受けていない場合であってマイナンバーカードによる資格確認を行うこともできない場合には、新しい健康保険証の交付を受けていない場合の現行の取扱いと同様に、医療機関等は、患者に対して医療費の全額(10割)を請求することを基本とする

基本は10割。ここをぼかすと、あとで患者様との説明が食い違います。

ただし、続きがあります。

ただし、当該患者が再診であり、医療機関等において過去の受診歴等や患者の身元が分かる場合など、個々の医療機関等の判断により、当該医療機関等で保有している情報等に基づき患者の窓口負担を3割分等とするなど、柔軟な対応を行うことが妨げられるものではない

つまり「再診で身元が分かるなら3割等にしてもよい。決めるのは病院」という書き方。通知が判断をこちらに預けている場所です。

だから受付が一人で決めるところではありません。決まっていなければ、先に決めておきたいところ。

病院ごとに、先に決めておく4つ

通知が判断を委ねている以上、決めておかないと毎回止まります。

病院ごとに決めておく4つ。柔軟対応をするか、預かる割合、戻す窓口、決める人

  1. 再診で身元が分かる人に、柔軟対応をするか
  2. する場合、預かるのは3割等か
  3. あとで戻す時の窓口は、病院か保険者か
  4. 決めるのは誰か(その場で判断してよいか、確認してからか)

この4つが埋まっていれば、患者様の前で止まりません。埋まっていなければ、何回同じ場面が来ても、そのたびに誰かを探すことになります。

私は10年以上受付にいましたが、申立書を実際に書いてもらった場面はそう多くありませんでした。いったん自費でお預かりして、あとで戻す形をとっていた時期もあります。

通知が示す手順はここまでのとおり。最後の扱いは病院のルールが優先します。だからこそ、先に4つを埋めておくのが早い。

💬 「当院での取り扱いを確認いたします。少しお待ちいただけますか」

レセプトは、資格が分からなくても出せます

窓口の対応が終わったあと。ここにも道があるのが、この通知です。

資格が分からない時のレセプト。口頭で確認した資格、喪失済みや過去の受診歴の資格、不詳のまま請求

通知の3項に、3つ書かれています。

  1. 聞き取りや口頭確認で現在の資格が分かった:その保険者番号と記号・番号を明細書に記載して請求
  2. 現在の資格は分からない:「資格(無効)」画面の喪失済みの資格や、過去の受診歴から確認した資格で請求できます
  3. どれも特定できない:申立書の提出があった患者様なら、摘要欄に住所・事業所名・連絡先などを記載し、番号は「不詳」のまま請求できます

3番まで用意されているのが、この通知のありがたいところ。

喪失済みの資格で出した場合も、審査支払の時点で新しい保険者のデータが登録されていれば、返戻せずに自動で振り替えるのが基本とされています。

💡 資格の確認が済んだあと、算定の条件で迷った項目は算定確認ナビから公式資料で確かめられます。

言い方を変えるだけで、身構えられなくなる3つ

同じ内容でも、相手の反応は言葉の選び方しだいです。

つい言ってしまう 代わりに
持ってこないと分かりませんよ 今お調べします
(先に金額だけ伝える) 手続きの順番を先に伝える
制度が変わったので 私が確認します

主語を制度から自分に変える。それだけで、相手の身構えはずいぶん下がります。

忘れてきた患者様も、忘れたくて忘れたわけではありません。責める言葉になっていないか。ここは、言ってから気づくことが多い場所ですね。

窓口で使う、通しチェックリスト

上から順に。印刷して院内で使える形にしました。

窓口の通しチェックリスト。声をかける、カードの有無、カードがある、前に来ている人、カードも保険証もない、連絡先

  1. 先に声をかけた:「今お調べします」と伝える。時間と金額は言わない
  2. マイナンバーカードの有無を聞いた:ここが10割かどうかの分かれ目
  3. カードがある:マイナポータルの画面か健康保険証。なければ申立書
  4. 前に来ている人か見た:口頭で確認できれば、申立書は書いてもらわなくてよい場合があります
  5. カードも保険証もない:基本は10割。柔軟対応をするかは病院の取り決めへ
  6. 連絡先を控えた:あとで資格が分かれば、その資格で請求へ

迷ったら、2番に戻ってください。カードの有無を聞く前に、10割と決めないことです。

よくある質問(FAQ)

Q. 資格確認書を持ってきた患者様は、どうなりますか?

資格確認書は健康保険証の代わりに使えるものなので、そのまま資格確認をして通常どおりの受付です。この記事は、資格確認書も持っていない場合の話になります。

Q. カードはあるけれど、マイナポータルの画面も資格情報のお知らせもありません。

被保険者資格申立書を書いてもらう場面です。窓口では、申し立てられた自己負担分(3割等)をいただきます。

前に来ている患者様なら、口頭確認で申立書の提出があったものとして扱える場合があります。

Q. 前回の受診が5年前でも、口頭確認でよいのですか?

通知に期間の定めはありません。確認するのはその時から資格情報が変わっていないことです。

年数が空くほど転職や扶養の変更が挟まるため、変わっていないと言い切れるかを聞き取るところになります。

Q. カードも保険証もない患者様に、3割で受けてもよいのですか?

再診で受診歴や身元が分かる場合など、病院の判断で3割等にする柔軟な対応は妨げられないと通知にあります。

判断するのは病院です。受付が一人で決める場面ではないので、院内の取り決めを確認してください。

Q. 患者様が申告した負担割合が、あとで違っていたら返戻になりますか?

70歳以上等について、申立てに基づく割合で受領した場合は、割合が違っていても、それだけで返戻は行わないことを基本とする、と通知に書かれています。

割合の違いが確認された場合は、保険者から患者様へ返還請求等が行われる流れです。

Q. 後日、保険証を持ってきてもらったら返金できますか?

返金の可否と期限は、病院ごとです。同じ月のうちなら窓口で調整できても、月をまたぐとレセプトを出したあとになるためです。

患者様に「あとで戻せます」と先に言い切らないのが安全。まず院内の取り決めを確認してから案内してください。

Q. 子どもだけで来て、何も持っていない場合は?

保護者に連絡が取れるかを先に確認します。カードの有無と保険の情報が分かれば、上の順番に乗せられます。

連絡がつかない時にどう扱うかは、4つと一緒に決めておきたい場面のひとつです。

まとめ|聞く順番は、保険証よりカードが先

  1. 最初に聞くのはカードの有無:10割になるかどうかの分かれ目がここにあります
  2. カードがあれば3割等の道が3つ:マイナポータルの画面・健康保険証・申立書。前に来ている人なら、口頭確認で申立書を省ける場合もあります
  3. カードも保険証もなければ10割が基本:ただし再診で身元が分かる人への柔軟対応は、通知が病院の判断に委ねています

制度を覚えるより、聞く順番を決めるほうが早い。何も持っていないと言われた時に手が動くのは、覚えている人ではなく、順番が決まっている人でした。

保険証・医療証まわりの基本は、無料の受付で固まらない制度早見表PDFにもまとめています。

参考にした一次資料

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■ 著者プロフィール
3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1つの病院で採用にも3年携わりました。
片道約50kmの高速通勤を10年続けたのち、転職サービス経由でフルリモートへ。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年8月11日