「特記事項、この患者さんは何を入れるんでしたっけ」
月初のレセプト点検で、いちばん迷う欄ではないでしょうか。区ア、区イ、多ア、多エ。似た略号が並んでいて、どれが正解か分からなくなります。毎月のことなのに。
私も最初の数年は、先輩の入力を横目で見ながら真似していました。
特記事項は厚生労働省の記載要領で決まっていて、数は33件。全部を覚えている人は、私の周りにもいません。毎月出てくるのは、そのうちのひと握りだけ。
結論から言うと、特記事項は「窓口で何が確認できたか」で決まります。患者さんの年齢や所得を推測して選ぶ欄ではありません。
認定証や受給者証の記載、マイナ保険証で取得した資格情報。基本は、そこで確認できた区分をそのまま写す形になります。
今やること2026年8月1日から「35 多オ」の対象が広がりました。70歳以上・低所得者Ⅱで難病や特定疾患の公費を使っている患者さんがいたら、8月診療分から入れ忘れがないか見てください。
▼ 33件の一覧を見る
2026年8月1日から変わったところ
先に、今年の改正から。
厚生労働省が令和8年7月29日付で記載要領を改正しました(保医発0729第2号)。適用は令和8年8月1日から、つまり8月診療分のレセプトからです。
通知の原文は、こうなっています。
高額療養費制度の見直し(令和8年8月施行分)により、70 歳以上の低所得者Ⅱ区分の者に係る高額療養費の多数回該当(24,600 円)が設定されることに伴い、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26 年法律第50 号)による特定医療又は特定疾患治療研究事業に係る公費負担医療において、自院における高額療養費の支給が直近12 か月間において4月目以上である場合は、特記事項欄に「35 多オ」を記載すること。
出典:厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』の一部改正について」令和8年7月29日 保医発0729第2号
これまで「35 多オ」の対象は、70歳未満の低所得者(適用区分オ)だけでした。8月から70歳以上の低所得者Ⅱが加わっています。
入れるのは3つとも当てはまる時
3つとも満たす月に入れます。1つでも欠けたら対象外。
70歳未満の低所得者で多数回該当の場合も、これまでどおり35 多オを入れます。8月の改正は対象を足したもので、置き換えではありません。
なぜ変わったのか
高額療養費制度そのものが変わったからです。
健康保険法施行令等の一部を改正する政令が令和8年8月1日に施行され、70歳以上の低所得者Ⅱに多数回該当の限度額24,600円が設定されました。
70歳以上で低所得者Ⅱの患者さんが同じ12か月のうちに4回目の高額療養費を受けると、その4回目から負担の上限が下がる、という変更です。
下がったことをレセプトの上で示すのが、35 多オの記載です。制度側に新しい区分ができたので、レセプト側にもそれを示す記載が要ります。
特記事項の一覧 33件
令和8年8月1日時点の一覧です。コード順に並べました。
電子レセプトではコードと略号の両方を記載します。レセコンで略号を選べば自動で入りますが、選ぶのは人です。
05・06・15・17〜20・22〜24・40は欠番です。表から抜け落ちたのではなく、もともと設定されていません。
条文そのものは長く、ただし書きも付いています。判断に迷ったら要約ではなく原文を見てください。記載要領の全文は厚生労働省のサイトにあり、記事末の出典からたどれます。
毎月出てくるのはひと握り
全部は覚えません。外来の受付と点検で繰り返し出てくるのはこの範囲。
残りは、出てきた時に調べれば間に合いますよ。
区と多の読み分け
似ていて迷うのが、区ア〜区オと多ア〜多オ。
分かれ目は多数回該当かどうか。自分の病院での高額療養費の支給が、直近12か月で4月目以上になっているかを見ます。
- 1〜3月目 → 区ア〜区オ
- 4月目以上 → 多ア〜多オ
多数回該当そのものの数え方は、別の記事にまとめています。
区アの人が4月目に入れば多ア。区エの人が4月目に入れば多エ。所得区分はそのままで、頭の文字が入れ替わるだけですね。
多数回該当の判定はうちで何回目かで決まります。ここに気をつけたいところ。
患者さんが他の病院でも高額療養費に当たっていたとしても、数えるのは、うちの分だけ。
70歳以上は区分の呼び方が変わって、現役並みⅢ〜Ⅰ、一般、低所得者Ⅱ・Ⅰ。受給者証の適用区分ではⅤ〜Ⅰの数字で書かれています。表の32〜34に添えたのが、その対応です。
どこを見れば決まるか
迷ったら、材料を見ます。その日窓口で確認できたものだけ。患者さんの見た目や年齢から推測するのではなく、目の前にある材料だけで決めるほうが、結果として速いです。
- 限度額適用認定証、または限度額適用・標準負担額減額認定証に区分が書いてある
- マイナ保険証で資格確認をすると、限度額の適用区分まで取得できる
- 公費の受給者証に適用区分の記載がある
- 後期高齢者医療資格確認書に一部負担金の割合が書いてある
どれも出ていなければ、区分は分かりません。推測で入れない。確認してから入れるほうが、結局は早く終わります。
なお指定難病の受給者証は、2026年3月から適用区分の記載が外れました。そちらは別の記事にまとめています。
限度額適用認定証をお持ちでしたら、お預かりできますか。お持ちでない場合も、マイナンバーカードで確認できます。
受給者証の区分のところを確認させてください。こちらの記載で、今月のお支払いが変わることがあります。
空欄と、間違いは違います
特記事項が空欄でも、間違いとは限りません。
認定証もマイナ保険証の資格情報もなければ、区分は入れられない。その患者さんは窓口で通常の自己負担を払って、あとからご自分で保険者へ申請し、払い戻しを受けます。
限度額の認定を取らずに、毎回この流れで通している方もいますよね。制度どおりの動き方です。
返戻になるのは、入れた区分が間違っていた時。
多いのは次の2つ。
- 認定証を月の途中で預かったのに入力が後回しになって、前月の区分のまま出した
- 多数回該当の4月目に入ったのに、前月と同じ区アのまま出した
どちらも、レセプトに載っている区分と、実際の区分が食い違う形。認定証を預かったその日に入力まで終わらせておくと、この2つはほとんど消えますよ。
よくある質問
Q. 限度額適用認定証がない患者さんは、特記事項をどうしますか?
区分が確認できないので、原則として入れません。マイナ保険証で資格確認ができれば適用区分まで取得できるので、まずそちらを試してみてください。
Q. 限度額適用認定証を出さない患者さんは、損をしますか?
いえ。窓口で自己負担分を払って、あとからご自分で保険者へ申請すれば、払い過ぎた分は戻ります。認定証やマイナ保険証で先に区分が分かれば、その場で限度額までの会計にできる。
そこが違うだけです。
Q. マイナ保険証で区分が取れた場合、認定証は要りますか?
オンライン資格確認で限度額の適用区分が取得できていれば、その区分を特記事項に入れます。認定証の提示を別に求める必要はありません。
Q. 月の途中で所得区分が変わったら、どちらを入れますか?
迷ったら、加入している保険者や公費の担当に確認してください。扱いが変わるのは、区分の変更日と、その月の診療日の関係。
Q. 70歳以上で認定証を持っていない場合は?
後期高齢者医療なら、資格確認書の一部負担金の割合から区カ・区キを判断します。公費との併用がなければ、そもそも入れない月も。
Q. 多数回該当の4月目かどうか、どこで分かりますか?
自分の病院での高額療養費の支給回数を、直近12か月で数えます。レセコンに履歴が残っている施設が多いはずです。
残っていなければ、月初の点検で前月までの請求をさかのぼります。
Q. 「35 多オ」の8月改正は、7月分の請求にも関係しますか?
適用は令和8年8月1日からなので、7月診療分はこれまでの取り扱いのままです。
月初に見返したい3つ
- 特記事項は33件。毎月出てくるのはひと握りで、残りは出てきた時に引けば足ります
- 選ぶ基準は、患者さんの情報ではなく窓口で確認できた区分。推測で入れない
- 2026年8月1日から「35 多オ」に70歳以上の低所得者Ⅱが加わりました。難病・特定疾患の公費で、多数回該当の月が対象です
月初に慌てないための欄なのに、月初にいちばん迷う欄でもありますよね。迷ったら表に戻る。それで足ります。
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出典
出典:厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」令和8年3月27日 保医発0327第2号(PDF)
出典:厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』の一部改正について」令和8年7月29日 保医発0729第2号(令和8年8月1日適用)
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(リンク)
いずれも2026年9月21日に確認しました。
画面の表示や様式は、レセコンの機種やバージョンで変わるところ。勤務先の運用とあわせて確認してください。