結論:医療事務は、全部はなくなりません。ただし、定型作業はAIや自動化に置きかわり、"中身"は確実に変わっていきます。 「AIで医療事務はなくなる」の記事を見て、不安になった人も多いはずです。

今やること今日の自分の仕事を思い出して、機械に置きかえられないことを1つ挙げる。
▼ 残る業務5つを見る

総合病院で医療事務10年以上、いまは在宅で算定業務を担当し、元採用担当も3年経験した立場から、実際に自動化された業務と、今も人がやっている残る業務の境界線を、現場の実感で解説します。

これから生き残る医療事務の条件まで、隠さずお伝えします。

この記事でわかること

  • 「医療事務は将来なくなる」と言われる本当の理由
  • 10年現役が見た、実際に自動化された業務
  • それでも人がやっている「残る業務」5つ
  • 生成AIを実際に使ってみてわかったこと(残業が週3時間ほど減った実体験)
  • むしろこれから増える業務と、5年後・10年後の予測
  • 元採用担当が思う「生き残る医療事務」の条件と、年代別の戦略
  • 今日から始める生成AI活用ロードマップ
  • これから目指す時・続ける時のFAQ

「医療事務 AI なくなる」と夜に検索していた頃

この不安は、私自身が何度も通ってきたものです。

数年前、レセプト請求の仕事をしながら、ふと思いました。

「この作業、AIがやればいいのでは?」

コード検索、算定ルールの確認、入力のパターン化。自分がやっていることの大半が、AIに置き換えられそうな気がしてきた。

その夜から、しばらく眠れない日が続きました。

「家族を養えなくなったらどうしよう」「医療事務しかやってこなかった自分には、潰しが効かない」3児の父として、現実的な不安でした。

去年の冬にも、仕事終わりに「医療事務 AI なくなる」とこっそり検索したことがあります。出てくる記事を片っ端から読んで、読むほど不安が増えました。

同じ検索をしたことがあるなら、この記事はそのために書きました。


「医療事務は将来なくなる」と言われる本当の理由

不安の正体から整理しますね。

「なくなる」と言われる理由は、医療事務の仕事のなかに、AIや自動化が得意な作業が多く含まれているからです。

たとえば、レセプト(診療報酬の請求書)の点数計算や、入力したデータのチェック。こうした定型作業は、機械がいちばん得意とする領域です。

実際、レセコン(レセプトコンピューター)や電子カルテの普及で、昔は手計算していた部分の多くが、自動で処理されるようになりました。

現役としての正直な実感私が新人だった頃と今を比べると、手を動かす作業はずいぶん減りました。点数は自動で計算され、エラーも機械がある程度はじいてくれます。これは事実です。

だから、「定型作業が減る」の見方自体は、間違っていません。

ただ、それは「医療事務の仕事が丸ごと消える」こととは、まったく別のものです。

ここが落とし穴です。混同すると、必要以上に不安になってしまいます。

大事なのは、「どの業務が減って、どの業務が残るのか」の境界線を知ること。


10年現役が見た、実際に自動化された業務

率直に「減った・楽になった」業務から挙げますね。

ここを認めないと、残る業務のことに説得力が出ないからです。

自動化が進んだ業務 今どうなっているか
点数計算 レセコンが自動で算定し、手計算はほぼ不要に
レセプトの一次チェック システムが算定漏れ・矛盾をある程度はじく
受付・会計 自動受付機・自動精算機が広がってきた
保険の資格確認 オンライン資格確認で、目視照合の手間が減った
問診・案内文 Web問診や定型文の下書きをAIが補助

並べてみると、たしかに「人の手」が減ってきたのが分かります。

新人の頃、私は分厚い点数表をめくりながら計算していました。今は、その作業の多くを機械が肩代わりしてくれます。

ある朝、出勤したら受付カウンターに自動精算機が増えていました。事前の説明はなく、朝礼で「今日から動きます」と一言あっただけ。

使い方を聞かれても答えられず、その日は患者さんの後ろに立って、一緒に画面を押していました。

それから数か月。レセプトの一次チェックもシステムが担うようになり、以前は1時間かけていた作業が10分ちょっとで終わるようになりました。

便利になったのは確かです。楽にもなりました。それでも頭の中には「私の仕事、これからどうなるんだろう」この声がくすぶり続けていました。

でも、悲観は不要です。

自動化された範囲は、あくまで「単純な作業」の部分です。仕事の中心は、別のところに移っただけ。

ここで一つ、見落とされがちな点があります。機械が自動で出した結果も、「これで合っているか」を確認するのは人です。

点数が自動で付いても、その算定が患者さんの診療内容と合っているかは、人の目で確認します。

つまり、作業そのものは機械に渡せても、「正しさの責任」までは渡せません。この「責任は渡せない」が、医療事務が残り続ける根っこの部分です。


それでも人がやっている「残る業務」5つ

ここからが本題です。

自動化が進んだ今も、人がやっている業務を5つ挙げます。どれも、機械に任せきれない理由があります。

1. レセプトの病名・コメントの判断

レセプトを通すには、病名やコメントを医師に確認しながら整える作業が欠かせません。

これは「正解が一つに決まらない」業務で、臨機応変な判断が必要です。機械が自動で埋めると、実態とずれた病名になり、かえって事故を招きかねません。

たとえば、検査が通るように形だけの病名を機械任せで足してしまうと、後でカルテや保険手続きと食いちがいが起きます。ここは、医師に確認しながら人が整える領域です。

関連:病名まわりの線引きは、レセプトの病名は誰がつける?医師と医療事務の役割を10年経験者が解説で詳しくまとめています。

2. 査定・返戻への対応

請求が認められず戻ってきた時、なぜ査定されたのかを読み解き、再請求するかどうかを判断する。

ここには、過去の経緯や地域の審査の傾向まで踏まえた、人の経験が要ります。

同じ査定でも、「コメントを足して再請求すべきか」「今回は取り下げるか」の判断は、機械が一律に出せるものではありません。現場の肌感覚が効くところ。

3. 改定対応と「情報の解釈」

診療報酬は2年ごとに改定され、その内容は毎回ぼう大です。

何が自分の病院に関係するかを見極め、ばらばらの情報をかみ砕いて運用に落とす。この「解釈する力」は、まだ人の仕事。

改定のたびに、厚生局やメーカー、保険医協会で言うことが少しずつ違い、現場は毎回手探りです。その情報の海から自分の病院の答えを拾う作業は、経験の蓄積がものを言います。

改定のたびに業務が変わるのは、10年前から変わらない医療事務の特性です。毎回変わることを「学ぶ機会」と捉えているスタッフほど、長く続いている印象があります。

全部を一度に覚えようとせず、改定のたびに少しずつ更新していく感覚で大丈夫です。

4. 患者さんへの対応

不安そうな患者さんへの声かけ、複雑な制度をかみくだいた説明、クレームへの対応。

医療事務は、患者さんが最初と最後に会うスタッフです。ここは、機械に置きかえにくい領域として残ります。

たとえば、検査結果を前に不安そうな高齢の患者さんに、料金や手続きをかみくだいて伝える。自動精算機の前で戸惑う人に、こちらから声をかける。

こうした一手間は、数字には表れませんが、医療機関の印象を左右します。

会計窓口で「金額、こんなにかかります?」と聞かれた時、声のトーンから「払えるけど納得していない」のか「本当に困っている」のかを聞き分けます。

前者は丁寧な内訳説明。後者は高額療養費や分割払いの相談へ。判断を間違えると、片や不快、片や追い詰めてしまいます。

制度の説明も同じです。制度の「知識」はAIが持てます。

ただし「この患者さんの状況に、どの制度をどの順番で提案するか」の判断には、その方の家族構成・収入・他の病気・今後の見通しまで含めた総合的な理解が必要です。

実例:がん治療で長期化が見込まれる70代女性、ご主人が介護中、子どもは遠方。

この場合、限度額適用認定証→傷病手当金→医療費控除→必要なら相談員の紹介。この順序で伝えます。傷病手当金は、ご本人が勤め先の健康保険に入って働いている場合だけ。

ご主人の加入状況では決まりません。

支給の条件は協会けんぽの案内にあります。

AIは候補を並べることはできても、「今日この患者さんに何から伝えるか」は決められません。

クレームも、AIは定型回答を生成できます。

ただ、怒っている患者さんの目の前に立ち、感情を受け止めながら事実を正確に伝え、「ありがとう、わかった」の表情に変えていく力は、人間の仕事です。

元採用担当として面接してきた中で、クレーム対応が上手い方に共通していたのは「技術」ではなく「姿勢」でした。AIが持てないのは、この姿勢です。

5. 多職種との連携と突発対応

医師・看護師・他部門との橋渡しや、その場で起きるトラブルへの対応。

決まった手順のないところほど、人が間に立って動きます。

医師がカルテに書ききれなかった指示の確認、急に増えた予約の調整、システムが止まった時の段取り。こうした「想定外」は毎日のように起きます。

マニュアルにないときにどう動けるかが、人の価値そのもの。

「この患者さん、先月と顔色が違う」「このカルテ、前回と診察内容がつながっていない」

データの中の「ズレ」に気づき、先に動く。確認の一言を看護師に入れる。医師に「念のため聞いてみてください」と伝える。

こうした先回りの動きが、医療安全につながります。AIにできるのはデータの照合まで。「なんかおかしい」と感じる人間の違和感が命を守ることがあります。

リモート業務でも、Slackやチャットのトーン・絵文字の有無から「今日、◯◯さん機嫌悪そう」と察する力は機能しています。空気を読む力は、対面でもオンラインでも医療事務の核です。


現場で起きた変化を、もう少し具体的に

「自動化されると、仕事が楽になって終わり」と思われがちですが、現場の実感は少し違います。

たとえば、オンライン資格確認が入って、カードを目で照らし合わせる作業は減りました。自動精算機が入った職場では、会計の現金対応も減ります。

ここまでは、たしかに楽になった部分。

ところが、その分だけ別の仕事が増えるのが現実でした。

  • 機械がうまく読み取れなかった時の、エラー対応
  • 患者さんが操作に迷った時の、案内とフォロー
  • システムが止まった時の、手作業への切りかえ

つまり、単純作業が減った分、「機械を見守り、例外に対応する仕事」が増えた。そこが実際のところです。

お会計も同じです。定型のお会計は減ります。ただし「自動精算機でエラーが出た場合」「複雑な保険適用が絡む場合」「高額療養費の説明が必要な場合」は、引き続き人が必要です。

電子カルテの入力補助・コード提案・自動チェックも、これから進んでいきます。ただし、内容が正しいか判断する、患者さんへの説明と整合しているか確認する、例外ケースに対応する。

こうした仕事は残ります。

減る時間は「同じ作業を繰り返す時間」で、入力だけの仕事はこれから減っていく方向です。

だから、「自動化=仕事が消える」ではありません。「自動化=仕事の中身が、判断とフォローに寄っていく」と考えるほうが、現実に近いです。


データの向こうにいる人に気づくのは人

外来の月次データを整理していたとき、ふと名前に目が止まりました。内科の定期外来に毎月来ていた患者さんが、ここ2か月、受診の記録がありません。

気になって担当科の外来看護師に伝え、病院の手順に沿って通院のご案内をお送りしました。

数週間後、その患者さんが外来に来られて、受付でこう言ってくれました。

「お手紙、もらってよかった。来ようか迷ってたから」

データが示した事実は「受診が途絶えた」、ただそれだけです。その向こうに「あの患者さんかな」と顔を思い浮かべて動いたのは私でした。

データは「異常」を示せます。ただ、その先で誰に何をするかを決めるのは人。この一連の流れこそ、これからの医療事務の核になる部分。私はそう考えています。


医療事務で生成AIを実際に使ってみてわかったこと

最初は怖くて、現場でも口に出さないようにしていました。きっかけは、同僚に「やってみたら?」と勧められたこと。恐る恐る、患者さんへの説明文の下書きをお願いしてみました。

返ってきた文章は8割ほどそのまま使えるもので、自分が30分悩んでいた時間は何だったんだろう、と画面の前で少し笑ってしまったほどです。

30秒で、それっぽい文章が出てきました。30分かけていた作業です。ただ使い続けるうちに、はっきりわかったことがあります。

出てきた文章を「私の言葉に直す」工程が、どうしても必要でした。

その患者さんの背景を知っているのは私です。どんな言葉が伝わりやすいかも、経験でわかります。AIは「たたき台」を渡してくれる道具で、最後に「この人らしさ」を込めるのは人の仕事でした。

使い始めて数か月で、残業が週に3時間ほど減りました。浮いた時間で患者さんと少し長く話せるようになったのが、一番の収穫です。

AIを「敵」ではなく「下書き係」として捉える。それだけで、気持ちはずいぶん軽くなります。

怖いなら、自分で使ってみるしかない。そう思って、日常業務にもAIを組み込み始めました。

なお業務PCでは、会社の許可があるツールだけを使い、業務外の学習はプライベートPCで行っています。

AI(生成AI・RPA)が得意なこと AIには難しいこと
算定コードの検索と確認 患者さんの「表情の変化」を読む
レセプトの記載チェック 「なんか様子がおかしい」という直感
定型文・テンプレートの作成 クレームをしている患者さんの感情の鎮め方
過去データの集計・分析 「この先生、今日は機嫌が悪い」という空気感
算定ルールの条件確認 複雑な家庭事情に絡んだ費用の相談対応
マニュアル整備・議事録作成 新人さんの「言葉にしないつまずき」への気づき
翻訳(外国人患者向け) 高齢の患者さんへの声のトーン調整

使ってみて、「AIが得意なこと」と「AIには任せきれないこと」の輪郭がはっきりしてきました。

そして気づきました。「AIが得意なことを人間がやっていた時間」が、丸ごと空きます。その空いた時間を、AIには任せきれない仕事に使えばいい。それが現場での実感でした。


むしろ、これから増える・求められる業務

減るだけではありません。これから増える業務もあります。

ここに気づけるかどうかで、将来の景色が変わりますよ。

  • AIや新システムを使いこなす力:自動化が進むほど、それを正しく動かし、出力を確認する人が要ります
  • データの最終チェック:機械が出した結果が本当に正しいかを見抜く目は、これから重みを増します
  • コミュニケーションと調整:患者さんや多職種との橋渡しは、むしろ価値が上がっていきます
  • コンプライアンスの意識:請求の正しさを守る役割は、自動化が進むほど大切です

つまり、「作業をこなす人」から「機械を使って判断する人」へ、求められる中身が移っていきます。

これは、見方を変えれば前向きなことです。単純作業に追われる時間が減り、人にしかできない仕事に集中できるようになる。そう捉えると、自動化は医療事務の敵ではなく、味方にもなりますよ。

10年以上の現場感覚として、AI共存時代に強い医療事務になるためのスキルを3つ挙げてみました。

スキル 内容 学び方
① データ分析 レセプト・外来データから傾向を読む ExcelのピボットテーブルとGoogleスプレッドシートから
② AI活用リテラシー 個人情報を守りながらAIを使い分ける 生成AIの無料版を週1で触る
③ 患者接遇の言語化 「なぜそう対応したか」を説明できる 院内研修・コミュニケーション本から

ベテランの医療事務ほど「接遇の勘」を持っています。でもそれを言葉にできないと、若手に継承できないし、評価もされにくい。

「言語化」は、これから10年で一番伸びる人の特徴だと思います。

体系的に基礎から学び直したい時は、『医療事務、向いてないかも』入職1ヶ月で限界だった私が、辞めずに続けられた理由(¥1,980)も入口にしてみてください。無料部分から読めます。


5年後・10年後の医療事務はこう変わる(私の予測)

10年以上現場にいる人間として、これからの変化を3段階で予測してみました。あくまで現場感覚ですが、転職や学び直しの参考にしてください。

1〜3年後・2027〜2029年|自動化レイヤーが拡大

領域 変化
受付 マイナ保険証・セルフチェックインで受付スタッフ縮小
会計 自動精算機が標準。窓口は例外対応に集中
レセプト AI一次チェックが当たり前に。返戻率改善
文書 診断書・紹介状の下書きをAIが生成

4〜7年後・2030〜2033年|医療事務の役割再定義

領域 変化
算定 AIが算定提案、人が最終判断
データ分析 経営層への分析レポートが医療事務の主要業務に
患者対応 機械では対応困難な複雑ケースに集中
在宅勤務 算定業務のフルリモート化がさらに普及

8〜10年後・2034〜2036年|「医療事務」の名称が変わる可能性

領域 変化
業務名 「医療情報マネージャー」「医療データアナリスト」へ進化
スキル要件 データ分析・AI活用・接遇の3軸が求められる方向
給与 スキル次第で幅が出る
働き方 病院常駐+リモートのハイブリッドが標準

「医療事務」の肩書きは残らないかもしれません。それでも、患者さんと医療機関の間に立つ役割は残ります。そこは変わらないはずです。

看護師でも医師でも医療技師でもなく、その間を埋める人。そこがいなくなったら、医療は回らなくなります。


元採用担当が思う「生き残る医療事務」の条件

ここで、元採用担当として人を見てきた立場から、ひとつ本音をお伝えしますね。

採用や育成で「この人は残る」と感じたとき、その理由は作業の速さではありませんでした。

採用や育成のときに価値が高いと感じたタイプを挙げます。

置きかわりやすい働き方 これから生き残る働き方
決まった作業をこなすだけ 機械の出力を確認し、間違いに気づける
言われたことだけやる 改定や制度の変化を自分で追える
一人で抱えて確認しない 医師や同僚に確認し、連携できる
患者対応を後回しにする 不安な患者さんに寄りそえる

右側を見てください。どれもAIが苦手とする部分です。

そして、これらは才能ではなく、今日から積み上げられる「動き方」のこと。

現場で感じていること点数のことも分かって、新しいシステムも使えて、患者さんにもやさしい。そういう事務こそ、これから医療機関が長く一緒に働きたい人材だと感じています。

元採用担当をしていた頃、知識が完璧な人がいちばん安心して採れたわけではありません。むしろ「分からないことは確認します」「新しいことも覚えます」と素直に言える人でした。

なぜなら、知識や操作は後から身につきますが、確認する姿勢や学ぶ柔らかさは、その人の地力だからです。自動化が進むほど、この地力を持つ人の価値は上がっていきますよ。

「医療事務は誰でもできる」と言われることも少なくありません。でも、ここまで挙げた残る業務を見れば、それが思い込みだと分かります。

専門性は、ちゃんとある。見えにくいだけで、確かにそこに。

年代によって、力を入れるところも少しずつ違います。

年代 戦略
20代 AIツールを徹底的に試す。レセプト分野の専門性を1つ作る
30代 特に「制度の組み立て」と「クレーム対応」を磨く
40代 後輩育成・チーム運営への移行を意識。マネジメント経験を積む
50代以上 経験値を「言語化」する。ベテランの暗黙知が最大の資産

AIに「使われる」のでなく「使う」側になる、3つの習慣

将来の不安を減らすいちばんの方法は、AIや自動化を「敵」ではなく「道具」にしてしまうことです。

特別なスキルは要りません。明日から積み上げられる習慣を3つ紹介しますね。

習慣 中身
機械の出力を鵜呑みにしない 自動算定やAIの下書きを、最後は自分の目で確認する癖をつける
改定・制度の情報を自分で追う 一次情報(厚労省の通知・疑義解釈)に当たる癖を持つ
新しいシステムを面白がる 「難しそう」で止まらず、まず触ってみる

どれも「機械に置きかえられない人の動き」だという点で共通しています。

機械が出した答えを確認できる人、制度の変化を追える人、新しい道具を使いこなせる人。こういう人です。これからの現場で頼られるのは。

私がやっていること新しいシステムや加算が出てきた時は、面倒でもまず自分で一次情報に当たります。誰かの要約だけに頼ると、改定期につまずきやすいからです。この習慣が、機械に流されない自分の軸になっています。

AIを使いこなす医療事務と、そうでない医療事務の差は、これから開いていきます。ただし、使いこなすだけの医療事務もまた、AIそのものに置き換えられていきます。

生き残る人は「AIに任せる作業を任せて、空いた時間で人にしかできない対応に集中する」タイプです。


今日から始める生成AI活用ロードマップ

「使ってみたいけど何から?」そんな時に、私が実際に踏んだステップを共有しますね。

業務PCではなく、自宅のスマホ・私物PCで試すことが大前提で、個人情報は入力しないのが鉄則です。

ステップ やること 想定時間
① 無料登録 ChatGPT・Claude・Geminiのいずれかにアカウント作成 5分
② 雑談で慣れる 「今日の献立を提案して」など趣味の質問から 30分
③ 文章下書き 「◯◯について案内文を200文字で」と試す 1時間
④ 表の整理 雑多なメモを表形式に整理してもらう 1時間
⑤ 学習サポート 算定要件の理解を質問で深める(最終判断は告示原本で) 継続
⑥ 業務応用 個人情報を含まない範囲で雛形作成に活用 継続

最初の一歩は、患者さんへの説明文や案内文の下書きから試すのがおすすめです。

出てきた文章をそのまま使うのではなく、自分の言葉に直すことで「AIが得意なこと・自分が得意なこと」の違いが肌でわかってきます。

ツールを怖がるより、小さく使い始める方が圧倒的に速く慣れます。

ツール 活用例
ChatGPT(無料版) 算定ルールの解説、患者さん向け文面の下書き
Notion AI マニュアル下書き、議事録の要約
Google翻訳・DeepL 外国人患者向けの簡易翻訳
Excel関数・GAS 月次集計の自動化

絶対NGの使い方- 患者氏名・カルテ番号・病名など個人情報の入力
- 業務PCへの無断インストール(情報漏洩リスク)
- AI回答を検証せず患者・医師にそのまま提示
- 算定結論をAIだけで決める(必ず告示・通知で確認)

業務PCで使ってよいのは、勤務先が許可したツールだけです。個人情報・カルテ情報を入力すると、情報漏洩につながります。

自分で入れたいツールがある時は、必ず情報システム部門の許可を取ってください。

プライベートPCで学習し、業務で必要なら正式に申請するのが安全です。

AIが算定ミスを起こした時も、最終的には算定を承認した人間の責任です。そのため、AIは「下書き」までで、最終判断は人が告示・通知に当たって決める。

この線引きを崩さないことが、AI共存時代の医療事務の働き方です。


これから目指す時、続ける時に考えること

不安への答えを書いておきますね。

結論から言うと、医療事務の需要が、すぐにゼロになることは考えにくいです。

日本は超高齢社会に向かっていて、医療を受ける人は今後も増えると、内閣府の高齢社会白書でも示されています。医療機関がある限り、請求や受付を担う人は必要ですね。

ただし、求められる中身は変わります。

定型作業に頼りきるのではなく、判断・確認・コミュニケーションといった「人の強み」を育てておくことが、いちばんの備え。

私自身、総合病院での10年以上の経験をもとに、今は在宅で算定業務を担当しています。働き方そのものも、変わってきました。

数年前まで、私は片道50kmの高速道路を運転し、朝6時に起きて通勤していました。それが今は、転職サービスを通じてフルリモートの算定業務に移り、自宅で仕事をしています。

医療事務の経験があったからこそ、こうした働き方の選択肢にたどり着けました。自動化が進む流れは、見方を変えれば、働く場所や形が広がるチャンスでもありますよ。

進路でこの仕事を迷っている学生さんにも、お伝えしたいことがあります。

「なくなるかもしれない仕事を選ぶのは不安」という気持ちは、よく分かります。ただ、これから先、自動化と無縁でいられる仕事は、ほとんどありません。

大事なのは「なくならない仕事を選ぶ」ことより、「どんな仕事でも、機械と組んで価値を出せる人になる」ことだと感じています。

その意味で、医療事務は、制度・数字・人への対応をまとめて学べる、基礎づくりに向いた仕事です。

医療事務は、なくなる仕事ではなく、形を変えながら続いていく仕事です。

その変化に、動き方で乗っていけたらと思います。


よくある質問(FAQ)

Q. 医療事務は、あと何年でなくなりますか?

「何年でなくなる」と断言できる根拠はありません。定型作業は減っても、判断や患者対応といった人の業務は残ります。期限で不安がるより、残る業務の力を育てるほうが現実的です。

Q. これから未経験で目指すと、遅いでしょうか?

遅くはありません。むしろ、最初から「機械を使いこなす前提」で学べる分、有利な面もあります。作業の速さより、確認や患者対応といった人の強みを身につけるほうが効いてきます。

Q. AI化で、求人は減りますか?

定型業務が減る分、求人が絞られる可能性は指摘されています。一方で、超高齢社会で医療の需要が減ることは考えにくいです。

だからこそ、「替えのきかない働き方」を持つ人が選ばれる時代になっていきます。

Q. 資格は取っておいたほうがいいですか?

資格は入口の安心材料ですが、現場での評価は別物です。私自身、無資格で3つの総合病院で10年以上の経験があります。

資格より、確認と判断の動き方のほうが、長く役立つ。これが実感です。

Q. フルリモートの医療事務は、これから増えますか?

レセプト業務など、在宅でできる仕事は実際に出てきています。私もその一人です。働く場所の選択肢が広がっている点は、医療事務の将来の明るい面だと感じています。

リモートの方が「ツールを使って効率化する」文化が浸透しやすい傾向もあります。

Q. AIに仕事を奪われないために、今できることは?

特別なことは要りません。確認をていねいにする、改定の情報を自分で追う、患者さんに寄りそう。この積み重ねが、機械に置きかえにくい価値になりますよ。

Q. 「医療事務は誰でもできる」と言われると、不安ですよね。

残る業務を見れば、それが思い込みだと分かります。専門性は見えにくいだけです。自分の仕事の意味を言葉にできると、その不安は小さくなりますよ。

Q. レセプト業務こそ、AIに全部置きかわるのではないですか?

点数計算やチェックは、自動化がたしかに進んだ分野です。ただ、病名やコメントの判断、査定への対応、改定の解釈は、臨機応変さが要るため人が担っています。

レセプトは「機械と人の分担」へ移っていく、と考えるのが現実的です。

Q. 子育てや家庭と両立しながら、長く続けられる仕事ですか?

医療事務は、経験を積むほど替えのききにくい力になり、働く場所の選択肢も広がっています。フルリモートのように、家庭と両立しやすい形も出てきました。

長く続けるほど、自分の働き方を選びやすくなる仕事だと感じています。

Q. AIを使うのが苦手です。ついていけるか不安です。

最初から使いこなせる人は、ほとんどいません。苦手でも「まず触ってみる」ところからです。新しいシステムは、現場で使いながら少しずつ慣れていけば十分です。

むしろ、苦手な人の気持ちが分かるからこそ、患者さんへの案内が丁寧になることもあります。

年齢も関係ありません。AIの操作は、スマホで調べ物をするのと大差ありません。「使い方を学ぶ」より「どう仕事に使うか考える」方が大事で、それは経験豊富な方の方が得意なことも多いです。

実際、私の前職でAI活用に最も柔軟だったのは50代のベテランでした。

「ツールを教える若手」と「経験を渡すベテラン」の組み合わせが、今後の現場では一番強い。そう感じています。

Q. 同じ医療系でも、看護師や薬剤師のほうが将来安泰ですか?

国家資格の有無で安心感は違いますが、どの職種も自動化や制度変化と無縁ではありません。

職種で選ぶより、「その仕事のなかで替えのきかない動き方を身につけられるか」で考えるほうが、将来の備えになるはずです。

Q. 医療事務の仕事が好きになれません。AI時代に続けるべきですか?

好きになれないまま続けることと、AI時代に残れるかどうかは別の問題です。「好きではないが、患者さんとのやり取りは苦ではない」と思えるなら、向いている可能性があります。

もし「窓口自体が苦痛」であれば、フルリモートの算定業務や医療事務の在宅ワークの選択肢もあるはず。

Q. AIに置き換えられない病院・職種を見分けるコツは?

「定型業務の比率が低い」「相談業務が多い」「制度の組み立てが必要」な部署ほどAIに代替されにくいです。具体的には医療相談室・地域連携室・算定企画などです。


これからの医療事務で残る仕事

最後に、今日の要点です。

  1. 医療事務は全部はなくならない。ただし定型作業は自動化され、中身が変わる。点数計算や一次チェックは機械へ
  2. 残るのは「判断・確認・患者対応・連携」など、機械が苦手な業務。これから増える業務もある
  3. 生き残るのは作業が速い人ではなく、機械を使って判断し、人に寄りそえる人。専門性は今日から育てられる

「なくなる」の一言は、強くて不安をあおります。

それでも、中身を知れば、医療事務は形を変えながら続いていく仕事だと分かります。

変化を怖いと感じるなら、それはちゃんと考えている証拠。

不安になった時は、「自分の仕事のうち、機械に渡せない部分はどこか」を一度書き出してみてください。確認、判断、患者さんへの対応。

きっと、思っていたより多くの"人にしかできないこと"が見つかります。それが、これからの自分の強みです。

変化を怖がりすぎず、自分の強みを育てていけたらうれしいです。


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■ 著者プロフィール3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1つの病院で採用にも3年携わりました。
片道約50kmの高速通勤を7年続けたのち、転職サービス経由でフルリモートへ。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年9月23日