受付で、怒鳴られたことはありますか?
私はあります。何度も。
救急病院に勤めていた頃、
待ち時間に怒った患者さんに
カウンター越しに指を突きつけられたことがある。
「いつまで待たせるんだ!」
「お前の説明が悪いんだろ!」
心臓がバクバクして、手が震えて、
それでも「申し訳ございません」と頭を下げた。
仕事が終わったあと、
駐車場の車の中でしばらくエンジンをかけられなかった。
「こんな目に遭うのは、自分の対応が悪いからだ」
あの頃の私は、本気でそう思っていました。
「我慢する」時代は、2026年で終わる
もし今、あの頃の自分に会えたら
真っ先にこう言いたい。
「それ、我慢する必要なかったんやで」
2026年10月1日、
改正労働施策総合推進法が施行されます。
これにより、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が
すべての企業・医療機関の法的義務になります。
セクハラ、マタハラ、パワハラに続いて、
カスハラも「組織が従業員を守る義務」に加わった。
「患者様は神様です」の時代から、
「働く人の尊厳を守る」時代へ。
これは綺麗事じゃなく、法律です。
でも、法律ができても現場は変わらない?
正直に言います。
法律ができたからといって、
明日から怒鳴る患者さんがいなくなるわけじゃない。
だからこそ、
現場で自分を守る「技術」を持っておくことが大事。
私がもっと早く知りたかったのは、
「耐えること」じゃなく
「上手にかわすこと」でした。
受付で使える「自分を守るフレーズ」3選
医療事務の皆さんに、
今日からすぐ使えるフレーズを3つ置いておきます。
これは私が何年もかけて現場で学んだことと、
カスハラ対策の専門家の知見をかけ合わせたものです。
フレーズ① 感情を受け止めつつ、土俵に乗らない
「お辛いお気持ちは分かりました。ただ、その大声では正確なお話が伺えません」
ポイントは、相手の「感情」は否定しないこと。
でも「大声」という「行動」には線を引く。
たとえるなら、
ボクシングのリングに上がらずに、
レフェリーの立場で話すイメージです。
感情の殴り合いに参加した時点で、
こちらが消耗するだけ。
リングの外から冷静に対応する。
フレーズ② 「私が嫌」ではなく「ルールです」
「当院の規定により、他の方のご迷惑になる行為が続く場合は、診察を中断せざるを得ません」
これがものすごく大事。
「私が嫌だからやめてください」と言うと、
個人 vs 患者の構図になる。
でも「当院の規定により」と言えば、
組織 vs 問題行動の構図に変わる。
個人戦から組織戦に持ち込む。
これだけで、心の負担が全然違います。
私はこの考え方を知ったとき、
肩の力がすっと抜けた感覚がありました。
「私一人で戦わなくてよかったんだ」と。
フレーズ③ 記録を伝える「抑止フレーズ」
「正確な事実確認のため、ここからは記録を取らせていただきます」
「記録が残る」と知った瞬間、
多くの人は理性を取り戻します。
これは脅しではなく、
お互いを守るための手続き。
実際、2026年10月以降は
カスハラ対応の記録・報告体制の整備が
法的に求められるようになります。
だから「記録を取る」は、
もはや特別なことではなく
当たり前の業務の一部になっていく。
フレーズより大事な「心の守り方」
ここからは、フレーズ以上に
大事なことを書きます。
救急病院にいた頃の私は、
怒鳴られるたびにこう思っていました。
「自分の対応が悪かったんかな」
「もっと上手にやれたんちゃうか」
全部、自分のせいにしていた。
でも今ならわかります。
その怒りは、私個人に向けられたものじゃなかった。
患者さん自身の体調不良、不安、恐怖。
それが「怒り」という形で噴き出しただけ。
たとえるなら、
熱で38度ある人が機嫌が悪いのと同じ。
それは「症状」のひとつであって、
受付の対応が原因じゃない。
「相手の怒りは、相手の症状。
私の責任じゃない。」
この考え方を「デタッチメント(心理的距離)」といいます。
冷たいんじゃない。
明日も受付に立ち続けるための技術です。
2026年10月、具体的に何が変わるのか
改正法で医療機関に求められることを
簡単に整理しておきます。
① 方針の明確化と周知
「カスハラは許さない」という組織の姿勢を
院内掲示やホームページで明示する。
② 相談窓口の設置
被害を受けたスタッフが
すぐに相談できる体制を作る。
③ 事後のケア体制
メンタルケアや、必要に応じた配置転換など
被害者を守るフォローアップ。
④ 対応マニュアルの整備
「暴言が出たら上司と交代」
「記録は必ず残す」など、
現場が即座に判断できる基準を作る。
⑤ 毅然とした組織対応
信頼関係が失われた場合、
患者の病状に緊急性がなければ
診療拒否も法的に認められる方向へ。
これまで「努力義務」だったものが、
10月以降は法的義務になる。
つまり、
「スタッフを守らない医療機関」は
法律違反になる可能性があるということです。
「優しい人」ほど読んでほしい
ここまで読んでくれた皆さんは、きっと
「患者さんのために頑張りたい」と
心から思っている人だと思います。
でも、だからこそ伝えたい。
その優しさは、安全の上に成り立つものです。
自分が壊れてしまったら、
明日の受付に誰が立つのか。
目の前の患者さんを、誰が笑顔で迎えるのか。
「我慢すること」は優しさじゃない。
自分を守ることは、わがままじゃない。
2026年、法律がやっとそれを証明してくれた。
「患者さんのために頑張りたい。
だからこそ、理不尽な暴力からは
スタッフを守らなければならない。
それが2026年の新スタンダードです。」
さいごに
最後にひとつだけ。
もし今、受付で怒鳴られて
帰り道にしんどくなっている人がいたら。
「自分が悪い」と思わなくていい。
その怒りは、相手の症状。
私の対応のせいじゃない。
そう思えるようになるまで、
私は何年もかかりました。
でも、この記事を読んでくれた皆さんには
もっと早くその感覚をつかんでほしい。
今日からできることは、たった3つ。
① 感情の土俵に乗らない
② 個人戦ではなく組織戦に持ち込む
③ 相手の怒りと自分を切り離す
この3つを、しんどい日のお守りにしてください。
明日も受付に立つ皆さんの背中を、
この記事が少しでも支えられたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「わかる」「自分もそうだった」と感じてもらえたら、
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受付で「これ助かった!」という対応フレーズや、
しんどかった経験があれば
ぜひコメントで教えてください。
同じ現場で戦う仲間の言葉が、
一番のお守りになるから。
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