結論から言うと、10月になくなったのは「月8.8万円以上」の条件だけです。加入するかどうかは、週の所定労働時間が20時間以上か、勤め先の人数などで決まります。
勤め先が50人以下なら、職場が届け出ない限り、短い時間で働くパートは原則としてこれまでどおり対象外です。
今やること雇用契約書か労働条件通知書を出して、「週の所定労働時間」を見る。20時間以上なら、担当の職員に自分が対象かを聞く。
▼ 確認する順番を見る
総合病院で医療事務を10年以上、そのうち3年は採用する側にいました。いまはフルリモートで算定の仕事をしています。
この記事は、法律と厚生労働省・日本年金機構の資料をもとに書いています。
10月に変わったのは「月8.8万円以上」の条件だけ
2026年10月1日から、パートが健康保険と厚生年金に入る条件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」がなくなりました。
月8.8万円を1年に直すと約106万円。これが「106万円の壁」の正体です。
なくなった理由は、最低賃金。
すべての都道府県で最低賃金が時給1,016円を超え、最低賃金以上の時給で週20時間働けば月8.8万円以上になるため、条件として残す意味が薄れました。

出典:厚生労働省「短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入拡大のポイント」/資料を見る/画像はタップで拡大
令和8年1月に作られた資料なので「撤廃予定」の書き方です。施行日は、令和8年政令第275号で2026年10月1日に決まりました。
次の条件は、変わっていません。
週の時間と月の日数が、どちらも同じ職場のフルタイムの人の4分の3以上なら、勤め先の人数に関係なく、もともと加入の対象です。
この記事で扱うのは、週の時間か月の日数のどちらかが4分の3未満のパート。
ひとつだけ例外があります。最低賃金の減額特例を受けていて、所定内賃金が月8.8万円未満の人は、原則として加入しません。本人が申し出れば加入でき、その申し出に職場の同意はいりません。
自分が対象か、確認する順番
上から順に見て、どこかで「いいえ」になったら、今回の変更では加入の対象になりません。
まずは契約書から。
1〜3は自分で分かります。難しいのは4。
自分で数えるより、給与や社会保険の手続きをしている職員に聞くほうが早くて確実です。
「10月からの社会保険の件で、私は加入の対象になりますか?」
勤め先の人数は、自分では数えにくい
「51人以上」は、職場の人の頭数ではありません。数え方には決まりがあります。
- 厚生年金に入っている人を数に含める
- 週の時間か月の日数が4分の3未満の「短時間労働者」として加入している人は含めない。パートでも、時間と日数の両方がフルタイムの4分の3以上で加入している人は含める
- 医療法人は、法人番号が同じすべての事業所の合計。ほかの医院や介護施設の人も合わせる。グループ名が同じでも、法人番号が別の法人は合わせない
- 個人で開いている医院は、その事業所だけで数える
ここは見落としやすい所。
受付に5人しかいない医院でも、法人全体で51人以上なら対象です。反対に、短い時間のパートが多い職場は、見た目より人数が少なく数えられます。
残業で週20時間を超える月が続いたら
基準は、雇用契約で決めた「所定」の時間。残業は原則として含みません。
ただし、契約では週20時間未満でも、実際の労働時間が2か月続けて週20時間以上になり、そのあとも続く見込みなら、3か月目の初日から加入します。
月初のレセプト期に1か月だけ残業が増えた、くらいでは当てはまりません。週20時間を超える月が続いている時は、一度担当の職員に聞いておくと安心です。
「最近、毎月の勤務が週20時間を超えています。社会保険の対象になりますか?」
出典:厚生労働省 事務連絡 令和6年1月17日「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」問34/令和6年9月5日の「その3」問34も同じ内容です/全文は記事の後半に載せています
50人以下の職場でも、届け出れば加入になる
50人以下の職場では、週の時間か月の日数がフルタイムの4分の3未満のパートは、週20時間以上でも原則として加入の対象外です。
ただし、厚生年金に入っている人、70歳以上で働いている人、加入の対象になるパートを合わせた人数の2分の1以上が同意して、職場が届け出ると、条件に当てはまるパートはみんな加入します。
この届け出をした職場を「任意特定適用事業所」と呼びます。
職員全員の半数ではない点に注意。
自分だけ入らない、は選べません。すでに届け出ている職場もあるので、ここも担当の職員に聞くと確実です。
人数の条件も、これから少しずつ広がります。
保険料の負担が軽くなる「保険料調整制度」
2026年10月から、パートの保険料の一部を職場が最長3年間負担できる「保険料調整制度」も始まりました。

出典:厚生労働省「社会保険適用拡大の相談ガイドブック」9ページ/資料を見る/2026年10月1日に確認/画像はタップで拡大
使える職場と人
- 職場:2026年10月以降に任意特定適用事業所になった職場と、2027年10月以降に人数の条件の拡大で対象になった職場など
- 人:週の時間か月の日数が4分の3未満で、パートとして加入している人。標準報酬月額が12.6万円以下で、月収の目安は13万円未満。厚生年金は70歳未満
- 2026年10月1日の時点で、すでに特定適用事業所か任意特定適用事業所だった職場は使えません
- 2つ以上の職場で加入している人や、産休・育休で保険料が免除されている間は対象外
本人が選ぶ制度ではありません。使うかどうかは、職場が決めます。始める時は、職場が年金事務所などに申し出ます。
職場が多く出した分は、原則として3か月後の保険料から差し引かれるので、職場が最終的に納める保険料は増えません。保険料が軽くなっても、将来もらう年金の額は減りません。
自分が払う保険料の割合
ふだんは、保険料を本人と職場で半分ずつ払います。制度を使う期間は、標準報酬月額が低いほど本人の割合が下がります。
- 区分は標準報酬月額で決まります。もとになる報酬には、通勤手当や残業代も含まれます
- 軽くなる対象は、厚生年金保険料と健康保険料の一部。ボーナスにかかる保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金は対象外
- 健康保険組合は、もともとの負担割合が組合で違うことがあります。割合は組合に確認を
- 3年は、職場が制度を使い始めた月から数えます。あとから入った人は、残りの期間だけ
- 期間が終わると、ふだんの割合に戻ります
「うちの職場は、保険料調整制度を使う予定はありますか?」
出典:日本年金機構「保険料調整制度とは」2026年9月11日更新/ページを見る/割合は令和7年法律第74号 附則別表第二から計算
加入すると変わること
加入すると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が引かれます。かわりにつくのが、次の2つ。
- 将来の年金に、厚生年金の分が上乗せされる
- 協会けんぽなどの健康保険なら、条件を満たした時に、病気やけがで休んだ時の傷病手当金、出産で休んだ時の出産手当金がある
家族の健康保険の扶養に入っている人は、自分が勤め先の健康保険に加入すると、扶養から外れます。
家族の勤め先から扶養手当や家族手当が出ている時は、その条件も家族に聞いておくと安心ですね。
医師国保の医院・個人の医院は扱いが違うことがある
医院によっては、健康保険が協会けんぽではなく、医師国民健康保険組合、いわゆる「医師国保」のところがあります。
医師国保の医院は、健康保険の適用除外の承認を受けて、健康保険は医師国保、年金は厚生年金という形にしていることがあります。ただ、パートが医師国保に入れるかは、組合の決まり次第。
神奈川県医師国保のように、勤務時間が常勤の人の4分の3未満の人は加入できないと定めている組合もあります。
出典:神奈川県医師国民健康保険組合「加入するための条件」/ページを見る/2026年10月1日に確認
医師国保の保険料は、保険料調整制度で軽くなる対象ではありません。自分の場合どうなるかは、組合の名前と勤務時間を伝えて、担当の職員に確認してください。
個人で開いている医院は、医療の事業なので、常時5人以上の従業員がいれば社会保険の適用事業所です。5人未満なら、そもそも職場が社会保険の対象でないことがあります。
職場の説明で分からない所は、年金事務所にも聞けます。
公式資料の原文
ここからは、記事のもとにした法律・政令・通知の原文です。法律・政令・通知・事務連絡は著作権の対象外なので、原文のまま載せています。
法律の改正(賃金要件の削除)
健康保険法(大正十一年法律第七十号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第九号中「からハまで」を「又はロ」に改め、同号中ロを削り、ハをロとし、同条第三項各号を次のように改める。
出典:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)第33条より抜粋/参議院の法律本文を見る
削られた「ロ」が、月額8.8万円の条件です。厚生年金保険法も同じように改正されています。
最低賃金の減額特例を受けている人(附則第8条の3の2)
第八条の三の二 当分の間、適用事業所に使用される、短時間労働者のうち、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第七条の規定の適用を受ける同条各号に掲げる労働者であって、その者の報酬(同法第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第四十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であるもの(以下この条において「特定減額特例対象者」という。)については、第三条第一項(ただし書を除く。)の規定にかかわらず、被保険者となることができない。
2 特定減額特例対象者は、厚生労働省令で定めるところによりその事業所に使用される被保険者の保険を管掌する者(当該者が協会である場合にあっては、厚生労働大臣)に申出をしたときは、その者は、前項の規定にかかわらず、被保険者となることができる。
出典:令和7年法律第74号 第33条(健康保険法 附則第8条の3の2を加える部分)より抜粋/参議院の法律本文を見る
施行日を決めた政令(令和8年政令第275号)
社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(以下「改正法」という。)附則第一条第一項第九号に掲げる規定(改正法第十五条中公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成二十五年法律第六十三号)附則第五条第三項の表及び第三十八条第三項の表の改正規定並びに改正法第二十九条中確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)第四条第一項第三号の二、第八条第一項、第五十四条の二第一項、第六十二条、第六十四条、第六十九条、第七十条第二項、第七十一条及び第七十四条の二第一項の改正規定並びに改正法附則第三十三条の規定を除く。)の施行期日は、令和八年十月一日とする。
出典:令和8年政令第275号/厚生労働省の法令等データベースで見る
残業で週20時間を超えた時(事務連絡 問34)
問34 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。また、施行日前から当該状態であった場合は、施行日から被保険者の資格を取得するのか。
(答)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。
なお、施行時においては、実際の労働時間が直近2月において週20時間以上となっており、引き続き同様の状態が続くことが見込まれる場合は、施行日から被保険者の資格を取得します。
出典:厚生労働省 事務連絡(令和6年1月17日)「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について」別添 問34/厚生労働省の法令等データベースで見る
よくある質問(FAQ)
Q. 週20時間未満で働いている場合は?
今回の変更では、加入の対象になりません。家族の健康保険の扶養に入っている人は、これまでどおり年収130万円未満などの扶養の条件が関係します。
2026年4月からは、給与の収入だけの人などは、労働条件通知書などに書かれた契約の内容で年収を見込む扱いになりました。
契約期間が短い人や、シフトで勤務時間が決まっていない人などは、これまでどおりの方法です。扶養の条件は、家族が入っている健康保険に確認してください。
出典:厚生労働省 事務連絡 令和8年3月9日「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)」/資料を見る
Q. 契約が「月80時間」で決まっている場合、週20時間になりますか?
1か月の所定労働時間を、12分の52で割って週の時間を出します。月80時間なら、80÷52×12で約18.5時間。週20時間には届きません。
月の時間で契約している人は、この計算で一度確認してみてくださいね。夏休みなどで特定の月だけ短い時は、ふだんの月の時間で計算します。
出典:厚生労働省 事務連絡 令和6年9月5日「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について(その3)」問31・問32/資料を見る
Q. 最初の契約が2か月以内でも、加入しますか?
契約書などに「更新する」「更新する場合がある」と書いてあるか、同じ職場で同じ契約の人が更新された実績があれば、働き始めた日から加入します。ほかの条件にも当てはまることが前提です。
最初の契約期間を超えて働かないことを、職場と本人が書面で合意している時は別です。
出典:厚生労働省 事務連絡 令和4年9月9日 Q&A集 問2/資料を見る
Q. 加入したくない場合は、断れますか?
条件に当てはまる職場で、条件に当てはまる人は、本人の希望で入らないことは選べません。加入するかどうかは、勤務時間などの働き方で決まります。
時間を変えたい時は、まず職場と相談するところから。
Q. 40歳以上の介護保険料も、保険料調整制度で軽くなりますか?
いいえ。軽くなる対象は、厚生年金保険料と健康保険料の一部だけ。40〜64歳の人が払う介護保険料と、子ども・子育て支援金は、ふだんどおりの負担です。
出典:日本年金機構「保険料調整制度を利用した場合の保険料額の計算方法」/ページを見る
パートの社会保険は「週の時間」と「勤め先の人数」で決まる
- 10月になくなったのは「月8.8万円以上」の条件だけ。週20時間以上・2か月超・学生でない・勤め先の人数は残っている
- 勤め先の人数は厚生年金に入っている人の数で、医療法人は法人全体。自分で数えるより担当の職員に聞く
- 50人以下の職場でも、届け出れば加入。新しく始まった保険料調整制度で、本人の保険料が最長3年間軽くなることがある
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