「難病とマル障、両方の受給者証を持っている患者さん。レセプトは1枚でいいの?」
「自己負担が0円になった。相殺されたから?」
制度が重なった患者さんの窓口対応で、迷った経験がある人は多いはずです。

総合病院で医療事務10年以上、元採用担当3年の経験と、東京都の公式資料をもとにお答えします。

✅ この記事でわかること
- 難病医療費助成とマル障・マル親が重なった時、レセプトが1枚になる条件
- 例外的に別の請求書が必要になるケース
- 自己負担額が0円になる「相殺ではない」本当の仕組み
- 窓口負担が「2割」と「上限額」の低いほうで決まる理由
- 難病以外の診療が同じ月にある時の計算(分点数)
- レセプトの書き方が国保と社保で変わる部分
- 複数の公費が重なった時の優先順位
- 窓口で患者さんに確認しておきたいこと

結論から言うと、多くの場合レセプトは1枚にまとまりますが、公費の組み合わせ次第で例外があります。

今やること受給者証を2枚並べて、どちらの上限額が低いかを見る。
▼ 公費欄の書き方を見る

難病とマル障が重なると、なぜ迷うのか

難病医療費助成の患者さんは、心身障害者医療費助成(マル障)やひとり親家庭等医療費助成(マル親)を、同時に持っていることがあります。

この記事は、患者さんが医療証・受給者証を窓口で提示できるケースを扱います。

難病〔54〕・小慢〔52〕は国の制度なので、全国どこの指定医療機関でも同じ扱いです。

一方、マル障・マル親・都単独難病〔83〕は東京都の制度のため、都内の取扱医療機関が前提。

都外の医療機関でこれらを使う場合や、窓口で医療証を提示できなかった場合は、この記事の計算方法ではなく、後日申請して還付を受ける償還払いです。

公費が1つだけなら、窓口対応は慣れているはずです。

ところが公費が2つ重なった瞬間、「レセプトを分けるのか」「自己負担はどちらが優先か」を判断することが出てきますよね。

窓口で特によく出てくるのが、次の2つの疑問です。

  • レセプトは公費ごとに分けて、複数枚出すのか
  • 自己負担額が0円になった時、それは何が起きているのか

この記事では、東京都の公式資料に載っている実例をもとに、この2つを順番に整理します。

複数の公費が重なった時、レセプトは何枚になるか

先に結論を言うと、東京都の資料で示されているこの組み合わせ、つまり難病医療費助成〔法別54・都単独難病83〕または小児慢性特定疾病〔52〕と、マル障〔80〕・マル親〔81〕なら、公費併用レセプト1枚が基本です。

ただし都単独制度〔82・83・87〕が他道府県の国保・後期高齢者医療と組み合わさる時は、別請求になることがあります。

保険の決定欄の下に、公費①・公費②の欄が並ぶ形式です。これが「公費併用レセプト」です。

「難病とマル障、両方お持ちなんですね。レセプトは1枚でまとめて出せますよ」

1枚にまとまる条件と、まとまらない条件

負担者番号によって、扱いが分かれます。

負担者番号 請求方法
38・51・52・54 公費併用レセプト(1枚)
82・83・87で始まる都単独制度 条件によっては別請求になる

負担者番号が「82・83・87」で始まる都単独の医療費助成は、次のようなケースで扱いが変わります。

  • 他の道府県の国保・後期高齢者医療と組み合わさる場合
  • 他の医療費助成の自己負担分を、この都単独制度で請求する場合。社会保険との組み合わせなら、併用レセプトで請求できます

この場合は、保険単独のレセプトを通常どおり提出し、都への公費分だけを別の用紙「東京都負担医療費請求書等」でまとめて請求します。

「今回の組み合わせだと、レセプトとは別に都への請求書が要ります。少しお時間ください」

つまり、「公費が2つあるから必ず2枚」でも「必ず1枚」でもありません。どの公費とどの保険が組み合わさるかで決まります。ここが正確なところです。

自己負担額はどう決まるか。「相殺」ではない仕組み

窓口では「自己負担が0円になったけれど、何が相殺されているのか」とよく聞かれます。

先に言っておくと、「相殺」という言葉は正確ではありません。実際は、公費が順番に自己負担を圧縮していきます。

流れは、次の3段階に分かれます。

  1. 医療保険が適用され、1〜3割の自己負担額が決まる
  2. 公費①(難病・小慢)が助成する。患者さんに残るのは「医療費の2割」と「月額上限額」の低いほう
  3. 残った自己負担額のうち、公費②のマル障・マル親が助成する。課税世帯は患者さんの窓口負担が原則1割程度まで抑えられ、非課税世帯は0円になる

最終的に患者さんが窓口で払うのは、公費②の一部負担金として残った分だけです。

患者さんが払うのは「2割」と「上限額」の低いほう

ここが、いちばん誤解されやすいところです。

難病の医療費助成を受けている患者さんの窓口負担は、月額の上限額で決まる、と説明されることが多いですよね。

正確には、そうではありません。「その月の医療費の2割」と「所得に応じた月額上限額」をくらべて、低いほうが窓口負担です。

医療保険で3割負担の患者さんでも、指定難病の医療については2割まで軽減されます。計算の出発点は、この2割です。

厚生労働省の資料には、2つの例が並べて載っています。

医療費10万円の月 医療費4万円の月
医療費の2割 20,000円 8,000円
月額上限額(一般所得Ⅰ) 10,000円 10,000円
低いほうは 上限額の10,000円 2割の8,000円
窓口負担 10,000円 8,000円
公費負担 20,000円 4,000円

医療費が大きい月は上限額で頭打ち。小さい月は2割のほうが下回るので、上限に届きません。

上限額だけを見ていると、医療費が少ない月の計算が合わなくなりますよね。

「今月は上限まで届いていないので、2割のお支払いになりますね」

月額上限額は、所得の階層で決まる

難病の月額上限額は、患者さんごとに違います。市町村民税の課税状況で6つの階層。

階層区分 基準 一般 高額かつ長期
生活保護 制限なし 0円 0円
低所得Ⅰ 市町村民税非課税・本人年収80万円以下 2,500円 2,500円
低所得Ⅱ 市町村民税非課税・本人年収80万円超 5,000円 5,000円
一般所得Ⅰ 市町村民税課税〜7.1万円未満 10,000円 5,000円
一般所得Ⅱ 市町村民税7.1万円以上25.1万円未満 20,000円 10,000円
上位所得 市町村民税25.1万円以上 30,000円 20,000円

人工呼吸器等を装着している患者さんは、所得にかかわらず1,000円。

「高額かつ長期」は、一般所得Ⅰ以上の患者さんで、指定難病に関する月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年6回以上ある場合に、上限額が軽減される区分。受給者証に記載があります。

入院した時の食費は、この上限額とは別に全額自己負担です。上限に達していても、食事代は徴収します。

数字で見る実例

東京都福祉局の資料にある実例を、単純化してみました。

段階 金額
総額(10割分) 102,000円
医療保険の給付(7割) 71,400円
医療保険3割の自己負担 30,600円
公費①(難病)の助成 25,600円
公費①適用後の自己負担 5,000円(=難病の月額上限)
公費②(マル障)の助成 2,200円
最終的な窓口負担 2,800円

この例は、マル障・マル親が課税世帯のケースです。

公費②の窓口負担は、月の残額から1割を計算するのではありません。

受診のたびに総点数の1割を見て、その受診で残っている公費①の一部負担額を上限とする。この積み上げ方です。

この例では、1日目に2,200円、2日目に600円を徴収して合計2,800円。公費①の自己負担5,000円との差額2,200円が、公費②の助成分です。

マル障・マル親が非課税世帯の場合は、医療費の窓口負担が0円。ただし入院時の食事療養費は、非課税世帯でも自己負担です。

ここを0円と案内すると、後で行き違いが起きます。

別の実例では、公費①の上限にすでに達している場合、公費②の助成が0円になるケースも載っていました。

「重なれば必ず安くなる」わけではありません。ここは覚えておきたいところです。

「今月はもう難病の上限まで使われているので、マル障の負担も変わってきますね」

レセプトの公費欄に、実際にどう書くか

計算ができても、レセプトのどの欄に何を書くかで迷いますよね。東京都の資料に載っている記載例で、確認してみましょう。

公費①と公費②は、優先順位の高いほうが上

公費が2つある時、上の欄の公費①には、優先順位の高いほうが入ります。

難病〔54〕・都単独難病〔83〕・小慢〔52〕が公費①、マル障〔80〕・マル親〔81〕が公費②。

数字の大小で覚えないでください。都単独の難病〔83〕とマル障〔80〕なら、数字が大きい83のほうが公費①です。

番号順ではなく、制度の優先順位で決まります。

公費負担者番号と受給者番号は、それぞれの欄に受給者証のとおり転記。

全部が難病の診療なら、3つとも同じ点数

その月の診療がすべて難病に関するものだった場合、点数欄はシンプル。

欄 請求(点) 一部負担金額(円)
保険 10,200
公費① 10,200 5,000
公費② 10,200 2,800

保険・公費①・公費②のすべてに、同じ総点数を書くだけ。

違うのは一部負担金額の欄です。公費①には難病の自己負担額、この例では上限の5,000円。公費②にはマル障の窓口負担額2,800円を書きます。

公費②に書く2,800円が、患者さんが実際に窓口で払った金額と一致しますね。

公費併用レセプトの書き方。保険・公費①・公費②のすべてに総点数10,200点を書き、一部負担金額の欄に公費①は5,000円、公費②は2,800円を記載する

難病以外の診療が混ざると、点数が変わる

同じ月に難病以外の診療がある場合、公費①に書けるのは難病の点数だけ。

そして公費②の点数が、加入している保険で変わってきます。

欄 国保の場合 社保の場合
保険 15,200点 15,200点
公費① 7,000点 7,000点
公費② 8,200点 15,200点

国保は難病以外の点数だけ。15,200 − 7,000 = 8,200点です。

社保は総点数をそのまま。15,200点です。

一部負担金額は、どちらも同じ金額。変わるのは点数欄だけです。

「同じ患者さんでも、保険の種類でレセプトの書き方が変わるので確認しますね」

10円未満の端数は、窓口とレセプトで扱いが違う

計算した一部負担金に10円未満の端数が出た時、扱いは2つ。

  • 窓口:10円未満を四捨五入して、10円単位で徴収する
  • レセプト:四捨五入する前の1円単位で記載する

窓口でもらった金額をそのままレセプトに書くのは、ずれのもとです。管理票の記載も同じ考え方。

病院と薬局は別のレセプト。でも上限は合算する

同じ月に病院と調剤薬局にかかった場合、レセプトはそれぞれ別に作成。

ここで間違えやすいのが、上限額の管理です。レセプトは別々でも、自己負担上限額は病院と薬局を合算して管理します。

東京都の資料には、こんな例が載っています。

日付 窓口 医療費総額 自己負担額 累計額
1月5日 ○○病院 12,000円 2,400円 2,400円
1月5日 □□薬局 10,000円 2,000円 4,400円
1月6日 ○○病院 8,000円 600円 5,000円

1月6日の病院で累計5,000円に到達。この後は、病院でも薬局でも徴収しません。

この表の「自己負担額」は、難病の自己負担上限額管理票に載る金額です。

マル障・マル親が重なっている場合、実際に窓口でもらう金額はここからさらに計算します。管理票の数字をそのまま請求しないよう気をつけたいところ。

自己負担上限額管理票を1冊で運用するのも、このためですね。

「薬局でのお支払いも、この管理票に一緒に記載されます」

難病の診療とそれ以外が同じ月にある時

ここからが、実務でいちばん間違えやすい部分です。

難病の患者さんが、同じ月に難病とは関係のない病気でも受診することがありますよね。風邪をひいた、けがをした、といったケースです。

この時、難病の公費が使えるのは難病に関する診療の点数だけ。それ以外には使えません。

東京都の資料では、これを「分点数」と呼んでいます。

計算は、難病の部分とそれ以外の部分を分けて行う形。

難病の診療 難病以外の診療
総額 70,000円 82,000円
医療保険3割 21,000円 24,600円
難病の助成 18,000円 使えない
難病の自己負担 3,000円 対象外
マル障の助成 1,200円 16,400円
窓口負担 1,800円 8,200円

難病以外の診療には、マル障が単独で助成に入ります。課税世帯なら1割負担。

レセプトの記載は、国保と社保で違う

分点数がある時、公費②に書く点数が、国保と社保で変わります。ここは資料を見ないと分かりません。

保険 公費①(難病) 公費② (マル障)
国保 15,200点 7,000点 8,200点
社保 15,200点 7,000点 15,200点

国保は難病以外の点数8,200点を書き、社保は総点数15,200点を書きます。

公費①の難病の点数7,000点と一部負担金額は、どちらも同じ。

同じ患者さん、同じ診療内容でも、加入している保険で書き方が変わる。国保と社保を取り違えると、返戻の対象です。

「同じ月に難病以外の診療が入っているので、レセプトの書き方を分けますね」

マル障にも月額の上限がある

マル障の一部負担金にも、月額の上限あり。上限に達すると、それ以降は徴収しません。

東京都の資料には、マル障の上限に達した月の計算例も載っています。難病の上限とマル障の上限、2つを同時に見るときですね。

上限額は改定されるもの。金額は勤務先に届いている東京都の最新の案内で確認してください。

公費が3つ以上重なる時の優先順位

難病だけでなく、生活保護や他の公費が重なることもあります。東京都の資料には、はっきりした優先順位が書かれています。

この記事で扱った、難病・小慢とマル障・マル親等の組み合わせでは、東京都の制度上、法律に基づく国の医療費助成が最も優先され、次に都単独の医療費助成、その次にマル障・マル親・乳児医療・子ども医療・青少年医療の順です。生活保護など、他の公費が絡む場合の優先順位は別途確認が必要です。

3つ以上の公費が重なった時も、この順番で考えれば迷いにくいですよね。ただし、この並び順自体が東京都の資料によるものです。他の都道府県では、単独事業の優先順位が異なる場合があります。

窓口で患者さんに確認しておきたいこと

複数の公費を持つ患者さんは、月をまたぐと上限額の管理が複雑になりがちです。

窓口で伝えておくと安心につながる言葉を、いくつか紹介します。

「自己負担上限額の管理票は、上限に達したあとも記載が必要です。総額だけ書いて、他の欄に斜線を引かせていただきますね」

「他の医療機関や薬局でお支払いになった分も、月の上限に合算されます。領収書は保管しておいてください」

制度は都道府県ごとに条件や金額が異なります。

この記事の数字は東京都の例なので、他の自治体で働いている場合は、勤務先の指定医療機関向け案内や自治体窓口で確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 難病とマル障が重なったら、必ずレセプトは1枚にまとまりますか?

多くの場合は1枚ですが、負担者番号82・83・87で始まる都単独の公費が他都道府県の保険や他の医療費助成と組み合わさる場合は、別の請求書が必要になることがあります。

組み合わせを確認してから判断してください。

Q. 自己負担額は、いつも0円ですか?

いいえ。公費①の月額上限にすでに達している場合、公費②の助成が0円になることもあります。「重なれば必ず0円」ではありません。

Q. 「相殺」という言葉を使ってもいいですか?

正確な制度用語ではないため、記録や説明では避けたほうが安全です。実際は保険→公費①→公費②の順で段階的に自己負担を圧縮する仕組みです。

Q. 医療機関と調剤薬局、それぞれでレセプトは何枚ですか?

公費の数とは別に、医療機関と調剤薬局はそれぞれ独立してレセプトを作成します。同じ患者さんでも、受診した窓口の数だけレセプトができます。

Q. 他の都道府県でも同じ仕組みですか?

この記事で扱った、難病・小慢〔54・83・52〕とマル障・マル親〔80・81〕の組み合わせであれば、保険→公費①→公費②の順で圧縮する考え方は東京都の一次資料どおりです。

ただし負担者番号・上限額・請求方法、公費間の優先順位は自治体ごとに異なります。

勤務先のある自治体の案内を確認してください。

Q. 10円未満の端数はどう扱いますか?

窓口では10円未満を四捨五入して徴収しますが、レセプトには四捨五入する前の1円単位で記載します。

Q. 上限額に届かない月は、どう計算しますか?

医療費の2割を計算して、それが上限額より低ければ2割が窓口負担です。

上限額は「これ以上は取らない」の頭打ちであって、毎月その額を徴収するわけではありません。

Q. 難病と関係のない病気で受診した分は、公費が使えますか?

難病の公費は使えません。難病に関する診療の点数だけが対象です。難病以外の分は、マル障・マル親が単独で助成に入ります。

Q. 非課税世帯なら、入院しても支払いは0円ですか?

医療費は0円ですが、入院時の食事療養費は自己負担です。案内する時は「お食事代は別にいただきます」と一言伝えておくと安心です。

併用の窓口で、押さえる3つ

  1. 難病とマル障・マル親の組み合わせなら、レセプトは原則1枚。ただし都単独の公費が他都道府県の保険と組み合わさる時は、別の請求書が必要になることがある
  2. 自己負担額の決まり方は「相殺」ではなく、保険→公費①→公費②の順で段階的に圧縮する仕組み
  3. 複数の公費が重なった時は、国の制度>都の制度>マル障・マル親等の順で優先順位を考える

この記事で参照した資料

制度の数字と計算例は、次の公的資料で確認しています。確認日は2026年8月26日です。

  • 東京都福祉局生活福祉部医療助成課「難病(法別54・83)又は小慢(52)とマル障・親との併用における一部負担金の算出・レセプト記載方法」(令和5年7月更新)… 併用時の計算例、レセプトの記載方法、分点数の扱い
  • 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」… 窓口で徴収する割合
  • 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度」パンフレット… 階層別の自己負担上限額、2割と上限額の比較の考え方
  • 東京都福祉局「心身障害者医療費助成制度(マル障)」… 課税・非課税それぞれの窓口負担

制度は、改定のたびに変わるものです。金額や条件は、勤務先に届いている最新の案内でも確認してください。

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著者プロフィール詳細ゆう|総合病院で医療事務10年以上、元採用担当3年として多くの方の面接を担当。現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信中。

最終更新日:2026年8月26日