この記事でわかること

  • 医療事務市場の規模と需要動向を公的統計で確認できる
  • 高齢化と医療事務の需要の関係が数字で理解できる
  • AIで医療事務の仕事はどこまで奪われるのか、現役の実感がわかる
  • AI時代を生き残る医療事務の3条件が明確になる
  • 未経験で入って後悔しないための4つの判断軸が手に入る

結論|需要は当分ありそうで、AIにもすぐには置き換わらない

先に、結論から言うと、医療事務は需要の面では確実に安定している職種です。ただし「安定=給与が高い・楽」ではありません。

今やること自分が今いる場所の規模と年齢層を、数字で1回だけ見ておく
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  • 仕事がなくなる可能性は低い
  • 全国どこでも求人がある
  • 給料は他業種と比べて高くはない
  • 現場によって働きやすさは大きく違う
  • AIの影響は受けるが、置き換わりではなく協働になる

この前提の上で、市場規模・高齢化・AI影響・生き残る条件の4視点で順に解説します。


視点①|医療事務の市場規模|全国に約18万施設、推定60〜70万人の市場

医療事務の需要を決めるのは医療機関の数と高齢化の進行です。この2つに支えられているのが実情です。まずは数字で押さえます。

医療機関の数(厚労省 医療施設調査より)

施設種別 施設数
病院 7,944施設
一般診療所 105,712施設
歯科診療所 65,035施設
合計 178,691施設

出典:厚生労働省 医療施設動態調査 令和8年6月末概数/資料を見る/2026年9月16日に利用

医療事務の推定就業者数

医療事務だけを対象にした公的統計はありませんが、医療機関の事務職員数は推定で60〜70万人規模。看護師の約130万人に次ぐ規模の職種です。

求人サイトを見ても同じですよ。医療事務・受付・レセプト関連の求人は常時1〜2万件単位で出ています。求人が完全になくなるシナリオは、現実的に考えにくいです。

元採用担当としての実感

ここは肌感覚があります。元採用担当として3年間求人を出してきた立場で言うと、「求人が出れば応募はあるが、欲しい人材が来ない」が常態でした。需要は安定どころか、慢性的に人手不足です。


視点②|高齢化|2040年まで医療事務の需要は伸び続ける

数字で見てみますね。

内閣府 高齢社会白書によれば、日本は65歳以上の人口が3割を超え、2040年には35%に達する見込みです。

高齢化率の数値は改定されることがあるため、最新版は白書で確認してください。

高齢化と医療事務需要の関係

  • 高齢者の1人あたり医療費は若年層の約4倍
  • 慢性疾患の通院増加でレセプト件数も増加
  • 在宅医療・訪問診療の事務処理ニーズも拡大
  • オンライン診療の事務サポート需要も伸びる

高齢者数のピークは2040〜2042年と予測されています。数字の形だけ見れば、少なくとも今後15年は仕事が細っていく方向ではなさそうです。

年代別の医療費(厚労省データ)

年齢階級 1人あたり国民医療費(年間)
0〜14歳 19万5,400円
15〜44歳 14万8,300円
45〜64歳 30万6,800円
65歳以上 79万7,200円
75歳以上(再掲) 95万3,800円

出典:厚生労働省 令和5年度 国民医療費の概況 表5/資料を見る/2026年9月16日に利用

区切りは国の統計に合わせています。記事の後半に原文と表を載せました。

75歳以上人口が増えるほど、医療事務の処理量は増えます。


視点③|医療事務の給与の安定性|上がりにくいが、下がりにくい

医療事務の給与は、劇的には上がりません。ただ、急激に下がることも少ない。そこが特徴です。

施設規模別の給与レンジ(2026年の求人動向より)

施設タイプ 月給目安 年収目安 特徴
個人診療所 18〜22万円 250〜310万円 アットホーム・教育薄め
中小病院 20〜25万円 290〜360万円 業務範囲が広い
総合病院・大学病院 22〜28万円+手当 340〜450万円 教育体制あり
IT企業の医療事業部 25〜40万円 380〜550万円 在宅勤務多い
派遣・業務委託 時給1,300〜2,000円 250〜400万円 専門特化

安定の正体

病院経営は2年ごとの診療報酬改定で動きます。ただ、医療機関の倒産率は他業種より低く、給与テーブルの急変動は起きにくい構造です。

「来月急に給与が下がる」といった民間企業でありがちな上下は、医療事務では少ないのが実情です。

私自身、総合病院10年以上の経験で、ボーナスが大きく削られたことは一度もありませんでした。

▶ 関連記事:医療事務でキャリアアップ|元採用担当が教える年収を上げる3つの道【2026年版】


視点④|医療事務へのAI影響度|置き換わりではなく、協働になる

「事務職はAIに奪われる」とよく聞きますよね。医療事務10年以上・元採用担当3年として現場を見てきた立場から正直に言うと、AIに全てが奪われる可能性は低いです。

理由は次の業務マップを見ると整理できます。

医療事務業務のAI影響度マップ

業務 AI影響度 残る要素
受付・患者対応 低 不安な患者への声かけ、空気を読む対応
会計 中 自動精算機普及中、ただし問い合わせ対応は残る
資格確認 中〜高 マイナ保険証で自動化進行
レセプト点検 中 AIによる一次チェック、最終判断は人
算定判断 低 個別ケースの判断、改定対応
クレーム対応 低 人の温度感が必要
法改正キャッチアップ 低 解釈と運用判断

AIで自動化されにくい3つの領域

1. 患者対応には人の温度が必要

体調が悪い患者さん、不安な高齢の人への対応。ここは、AIには難しい領域です。「お大事に」の一言の温度感は、機械では作れません。

2. 医療事務は判断業務が多い

保険の資格喪失、公費の適用、労災か自賠責か。マニュアル通りにいかない判断が日常です。AIは補助になっても、判断を完全に任せるには至りません。

3. 医療は法改正が頻繁にある

2年ごとの診療報酬改定、マイナ保険証への移行など、ルールが変わる業界です。変化に柔軟に対応できる人間の役割は残ります。

公的データでも事務職全体は減らない見通し

厚生労働省 job tag(職業情報提供サイト)の「医療事務」のページには、レセプトの作成と窓口の受付が同じ職業の説明の中に並んでいます。

どちらも人と話すときと、その場の判断が残る仕事です。

AIで完全に置き換わる性質の職種ではありません。


AI時代を生き残る医療事務の3条件

ここまで読んで「自分は生き残れるのか」と感じている方もいるはずです。元採用担当として面接してきた経験から、AI時代に生き残る医療事務の3条件を整理します。

条件①|判断業務を担える経験値

レセプト点検で「これは査定されるかも」と気づける感覚。ここはAIにはまだ難しい領域です。3〜5年以上の現場経験で、自分の中の判断軸を作っておくと、置き換わりにくくなります。

条件②|患者対応のコミュニケーション力

機械では作れない人の温度感。これを持っている人は、どの現場でも重宝されます。技術ではなく姿勢のことです。

条件③|新制度を学び続ける姿勢

医療業界は2年ごとに大きく変わりますよね。改定に乗り遅れない人は、AIの進化にも乗り遅れません。

月刊保険診療・厚労省の通知・学会情報。何か一つは継続的に追える媒体を持っておくと強いです。

私が現在やっていること

私自身、フルリモートに移ってから月刊保険診療を毎月読む習慣ができました。総合病院時代は読む余裕がなく、改定が来てから慌てて学ぶ繰り返しでした。

専門性を磨く時間。これは職場環境で大きく変わります。


医療事務の働き方の選択肢|想像以上に多様

医療事務といえば、病院の受付。このイメージが強いですが、実際の働き方は多様です。

主な働き方

  • 病院・診療所の受付・会計
  • 医事課のレセプト専任・算定担当
  • 調剤薬局事務
  • 歯科事務
  • 病棟クラーク(入退院管理)
  • 医療事務派遣・業務委託
  • フルリモート医療事務(オンライン診療対応・レセプト業務)

私自身がそうでした。片道50kmの高速通勤だった総合病院勤務から、フルリモート医療事務に転職しました。通勤がゼロになって、毎日のしんどさが変わりました。

なお、フルリモートでもシフト制で出勤はあります。

働き方の多様性がもたらす「安定」

一つの働き方が合わなくても大丈夫。他にシフトできるのが、医療事務のキャリアの強みです。

  • 診療所から総合病院へ
  • 受付からレセプト専任へ
  • 正社員から派遣へ
  • 通勤からフルリモートへ

環境を変える選択肢が豊富にあること。それ自体が、長期的な安定につながります。


未経験で入って後悔しないための4つの判断軸

「将来性がある」の一言だけで飛び込む。これは危ないです。入職後に後悔するケースも見てきました。元採用担当として見てきた立場から、未経験者が見るべき4つのポイントをお伝えします。

判断軸①|職場の規模と雰囲気

  • 個人診療所:アットホームだが、休みが取りづらいことも
  • 総合病院:業務は多いが、教育体制がしっかりしていることが多い
  • 大学病院:研修制度が整っている分、配属先の選択肢が限られる

自分の性格に合う規模を選ぶ。それで定着率が上がります。

判断軸②|教育体制の有無

未経験で入るなら、教育体制の有無は死活問題です。

面接時に聞いておきたい質問は3つ。

  • 「新人の教育期間は何ヶ月くらいですか」
  • 「先輩とのOJTはありますか」
  • 「独り立ちまでの目安は」

教育体制が整っていない病院に未経験で入ると、3ヶ月あたりでしんどくなる人を何人も見てきました。

判断軸③|有給消化率・残業の実態

「安定」と「働きやすい」は違います。有給が取れない・残業が多い病院は、長期では続きません。

面接で「有給消化率はどれくらいですか」と聞いても失礼ではありません。むしろ真剣度の現れです。元採用担当として好印象でした。

判断軸④|将来のキャリアパス

3年後・5年後の自分を描ける職場かを見ます。医療事務で終わるのか、算定担当・管理職・業務委託へと進めるのか、キャリアパスの有無で長期の安定が決まります。

入職前チェックリスト

  • 教育期間は3ヶ月以上あるか
  • OJT担当が固定で付くか
  • 有給消化率が60%以上か
  • 残業時間の平均が公開されているか
  • 産休育休の取得実績があるか
  • 3年・5年・10年勤続のスタッフがいるか
  • 配属先の見学が可能か

このうち5つ以上当てはまれば、長く働くための材料がそろっている職場と見てよさそうです。


「将来性」を求める方が陥りがちな落とし穴

元採用担当として見てきた、よくある失敗を3つお伝えします。

1. 「将来性=楽」という誤解

医療事務は、受付・会計・レセプト・患者対応とマルチタスクが日常の職種です。楽ではありません。ただし、覚えてしまえば武器になるのが強みです。

2. 「資格を取ってから」で足踏み

資格取得を理由に、何年も踏み出せない方がいます。資格と並行して動くのが正解です。資格がないと採用されない職種ではありません。私自身、医療事務関連の資格は持っていません。

3. 「今の職場を辞めずに」の呪い

「安定しているから辞めない方がいい」は、ときに少しずつ自分が消耗していく状態につながります。合わない職場に留まっても、それは安定ではなく我慢です。


FAQ|医療事務の将来性に関するよくある質問

Q1. 医療事務は10年後もなくなりませんか

なくなる可能性は低いです。高齢化・医療機関の数・AIでは代替しきれない判断業務が存在するため、需要は続きます。

Q2. AIで仕事の何割が置き換わりますか

受付の一部・会計の自動精算・資格確認あたりは自動化が進みます。一方で、判断業務・患者対応・改定対応は人の手に残ります。

体感としては「全体の2〜3割が自動化、7〜8割は人が担う」くらいの割合でしょうか。

Q3. 未経験でも安定して続けられますか

続けられます。ただし、教育体制の整った職場を選ぶのが条件です。教育が薄い病院に飛び込むと、未経験者は3ヶ月で折れがちです。

Q4. 女性が多い職場は人間関係がきついですか

職場によるとしか言えません。総合病院は比較的フラットなことが多く、個人診療所は院長の人柄で雰囲気が決まる傾向があります。

面接で現場を見学させてもらえるか聞くと、入職前に空気感を確認しやすくなるでしょう。

Q5. フルリモート医療事務は本当に将来性がありますか

オンライン診療の拡大・レセプト業務委託の増加で、フルリモート求人は増えています。私自身2年以上この働き方を続けていますが、求人数は明らかに増加傾向です。

Q6. 医療事務と一般事務、どちらが将来性がありますか

どちらも需要はありますが、医療事務のほうが需要は継続的だといえます。高齢化による医療需要が底支えしているためです。

Q7. 「医療事務は辞める人が多い」と聞きました

確かに短期離職は一定数あります。理由の多くは教育体制の薄さと人間関係です。ここを見極めれば、長く続けられる職種です。

Q8. マイナ保険証で医療事務の仕事は減りますか

資格確認の手間は減りますが、トラブル対応・高齢者サポート・資格情報の不一致対応など、新しい業務が発生しています。トータルの業務量は大きく変わらないのが現場の実感です。


将来性は「需要×自分の選び方」で決まる

  • 医療事務の需要は確実にある。全国約18万施設、推定60〜70万人の市場
  • 高齢化で2040年まで受診需要は伸び続ける
  • AIで一部業務は自動化されるが、判断・対応・改定対応は人が担う
  • 生き残る3条件は「判断業務の経験値・対応力・学び続ける姿勢」
  • 未経験で入るなら教育体制・有給・残業・キャリアパスの4軸で選ぶ
  • 結論:自分に合った働き方を選べば、医療事務は十分に将来性のある選択

原文|統計の数字そのもの

この記事で使う数字は、市場の大きさと高齢化の2つです。どちらも国の統計なので、書き換えずに載せますね。

① 施設数(令和8年6月末概数)

病院の施設数は前月に比べ 5施設の減少、病床数は 1019床の減少。
一般診療所の施設数は  22施設の増加、病床数は  168床の減少。
歯科診療所の施設数は  22施設の減少、病床数は    増減なし。

出典:厚生労働省 医療施設動態調査 令和8年6月末概数/資料を見る/2026年9月16日に利用

同じ資料の表に、総数178,691・病院7,944・一般診療所105,712・歯科診療所65,035と並んでいます。毎月更新されるので、数字は月ごとに動きます。

② 年齢が上がるほど医療費は増える

年齢階級別にみると、0~14 歳は2兆7,688 億円(構成割合5.8%)、15~44 歳は5兆8,422億円(同12.1%)、45~64 歳は10 兆5,998 億円(同22.0%)、65 歳以上は28 兆8,806 億円(同60.1%)となっている。
人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満は21万8,000円、65歳以上は79万7,200円となっている。そのうち医科診療医療費では、65歳未満が14万5,300円、65歳以上が60万200円となっている。歯科診療医療費では、65歳未満が2万2,200円、65歳以上が3万6,900円となっている。薬局調剤医療費では、65歳未満が4万3,800円、65歳以上が12万7,000円となっている。

出典:厚生労働省 令和5年度 国民医療費の概況 5 年齢階級別国民医療費/資料を見る/2026年9月16日に利用

65歳を境に、1人あたりで3.6倍。この差が、高齢化で医療事務の処理量が増えると言われる根拠です。

厚生労働省 令和5年度国民医療費の概況の表5、年齢階級別国民医療費。令和5年度の人口一人当たり国民医療費は、総数38万6,700円、65歳未満21万8,000円、0から14歳19万5,400円、15から44歳14万8,300円、45から64歳30万6,800円、65歳以上79万7,200円、70歳以上の再掲86万4,900円、75歳以上の再掲95万3,800円。医科診療医療費、歯科診療医療費、薬局調剤医療費の内訳と、令和4年度との比較も並ぶ

出典:同じ資料の表5/資料を見る/2026年9月16日に利用・該当ページだけ切り出し/画像はタップで拡大

厚生労働省ホームページの資料は、出典を書けばそのまま転載してよい決まりです。だから要約せず、そのまま載せています。

公的窓口・参考情報


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著者プロフィールゆう|医療事務10年以上・元採用担当3年・現フルリモート
未経験・無資格から医療事務の世界に入り、総合病院で10年以上、元採用担当として3年。現在はフルリモートで算定業務をしながら、3児の子どもを育てています。7年間、片道50kmの高速通勤を続けたあと、転職サービス経由でフルリモートに切り替えた経験から「医療事務という選択肢」をリアルに発信しています。
Instagram: @iryo_jimu | note: h_kei_creator

最終更新日:2026年6月20日