結論から言うと、クレーム対応には「決まった手順」があります。
今やること次に怒鳴られた時のために、10ステップの1番目だけ覚えておく
▼ 対応10ステップを見る
怒鳴られた瞬間に正しい手順で動けると、状況はたいてい落ち着いていきます。そして怒鳴られる原因のほとんどは、「ご自身のミス」ではなく「病院そのものの構造」です。
だから、対応の上手・下手の前に、まず原因の置き場所を変える。これが消耗しないための第一歩です。
この記事では、私が総合病院で医療事務10年以上、うち3年は元採用担当として働く中で学んできたことを、そのまま使える形で書きます。
なぜ医療事務の受付にクレームが集まるのか
クレームが多い理由を一言で言うと、不安が集まる場所だから。
病院に来る患者さんが抱えているのは、体の不調や病気への心配。
検査結果が怖い。家族の病状が心配。痛みが続いている。そういう「不安」を抱えたまま、慣れない手続きや長い待ち時間を過ごしています。
その積み重なったストレスが、受付の窓口でたまたまはけてしまう。
怒鳴りたくて来ている人は、そう多くないはずです。不安を抱えたまま、抑えがきかなくなっていることのほうが多い。
とはいえ、向けられた側の怖さが消えるわけではありませんよね。
「待ち時間」だけが原因ではない
クレームのきっかけとして多いのは待ち時間ですが、実際には待ち時間そのものより「どれくらい待つかわからない」不確実性のほうが問題になりがちです。
この表を見るとわかるように、多くのクレームは「情報不足」と「期待のズレ」から起きています。
医療事務の大きなミスが原因ではなく、病院のシステムや環境に起因することがほとんどです。
クレームが多い職場は「個人の力で変えられない構造」になっている
長年現場にいて気づきました。クレームが多い職場には、共通点があります。人手不足、待ち時間の案内が不十分、窓口ルールが統一されていない。
どれも、一受付担当者の力でどうにかなるものではありません。そこは割り切っていいです。
「自分の対応さえよければ」と思いがちですが、構造が原因のクレームは、どれだけ完璧に動いても起きます。これは、皆さまのせいではありません。
だからこそ、ここから先の「対応の手順」は“自分を責めないため”の道具として使ってください。
医療事務が怒鳴られたときにやりがちな「NG対応」5つ
ここからは、実際に怒鳴られたときのことです。
多くの医療事務が、悪気なく無意識にやってしまう対応があります。良かれと思ってやっているのに、これをやると状況が悪化しやすい。まず「やらないこと」から押さえると、現場で迷いません。
NG① すぐに謝って説明しようとする
「申し訳ありません」とすぐに謝り、続けて「しかし、こちらの手続きでは……」と説明しようとする。
これが最もやりがちで、最もリスクの高い対応。
怒りのピークにいる人は「聞きたい」のではなく「吐き出したい」状態です。そこへ論理的な説明を入れると、「なんで言い訳するんだ」と受け取られ、火に油を注ぎます。
謝罪そのものは必要です。問題はタイミングです。相手がまだ吐き出している間は、説明も謝罪も保留し、後述の②で「聞く」に徹します。
NG② カウンター越しのまま話し続ける
受付カウンター越しに向かい合うと、無意識に「対立構造」ができ、周りの患者さんの視線も集まりやすくなるものです。
怒鳴っている本人も、見られている緊張感でさらに引っ込みがつかなくなることがあります。そこで効くのが、このあと紹介する④の「場所を変える」動きです。
視線から外すだけで、相手も一歩引きやすくなります。
NG③ 「自分でなんとかしなければ」と一人で対応し続ける
新人のうちはとくに「引き継ぐのは失敗」と感じてしまいがちですよね。
でも実は、これが最も状況を長引かせます。
一人で対応しているときに行き詰まると、沈黙や言葉を探す時間が生まれがちです。その時間が、患者さんには「この人は対応できない」と映ることがあります。
複数人で対応する。それが、私の職場ではクレームを早く収める近道でした。
NG④ その場で言ってはいけないNGワード
NG⑤ メモを取らずに対応する
記憶だけで対応すると、後で上司への報告が曖昧になりがちです。
怒鳴られている最中でも、患者さんから見えない位置で日時・発言の要点・要求だけはメモしておきます。
残したこの数行が、後の対応の質を決めます。
医療事務のクレーム対応10ステップ|現場で続けてきたこと
NG対応を踏まえて、ここからは実際に使える10ステップです。上から順に「深呼吸→聞く→復唱→場所を変える→応援を呼ぶ→事実確認→謝罪と提案→撤退判断→上司報告→記録」と動きます。
これは私が総合病院で医療事務10年以上、受付・会計の現場で少しずつ身につけてきた手順です。全部を完璧にこなす必要はなく、頭が真っ白になっても上の流れだけ思い出せれば動けます。
①深呼吸して姿勢を整える|10秒
怒鳴られた瞬間、まず鼻から3秒吸って口から5秒吐く。たった1回でいいです。姿勢を正し、両足を床にしっかりつけます。これで体の硬直が緩みます。
②「聞く」だけに徹する|目安2〜3分
相槌は「はい」「そうでしたか」「おっしゃる通りです」だけで十分です。余計な言葉を足さず、ひたすら「聞いている」姿勢を見せます。
人間の怒りのピークは、だいたい2〜3分。それを過ぎると、少しずつ落ち着いてきます。
元採用担当の本音新人教育で最初に伝えるのは「30秒だけ黙って聞いてください」です。30秒聞き切れると、その後の対応はたいていスムーズに進みます。
③要点を復唱する
「お会計の金額が前回と違っていてご不審に思われた、ということでよろしいでしょうか」復唱は「聞いていますよ」のサインです。
誤解があれば訂正してもらえます。
④場所を変える

「少し静かな場所でお話しさせてください」
この一言は、状況をリセットする効果が大きいフレーズです。移動して周りの視線から離れると、患者さんも「一歩引く」きっかけができます。
歩く動作そのものにも、気持ちを切り替える効果があると先輩に教わりました。
移動先は、カウンター脇の少し奥まったスペースで十分です。ただし、密室に二人きりにならないこと。先輩や同僚から見える場所に移ることが大前提です。
これは患者さんを守るためでもあり、自分を守るためでもありますね。
⑤先輩・上司に視線を送る
目線を送る。それだけで大丈夫です。
対応中に近くにいる先輩や同僚に視線を送ると、経験のある人が気づいて近づいてきてくれます。引き継ぎは失敗ではありません。複数人でのチーム対応が、クレームを最短で解決する正しい形です。
⑥事実確認をする
カルテ・会計記録・予約状況をその場で確認。「確認しますので少々お待ちください」と伝えてから、データを正確に拾います。憶測で答えないのが鉄則です。
⑦謝罪と提案をワンセットで
「大変ご不便をおかけしました。こちらで◯◯を確認のうえ、△分後にご返事させていただきます」謝罪だけでなく次の一手を必ずセットにします。
⑧撤退テク|自分が下がる判断
以下のサインが出たら、自分は下がって上司にバトンを渡してください。
- 患者さんが手を上げる素振りを見せた
- 1対1の対応が10分を超えた
- 自分の声が震えてきた
- 同じ説明を3回繰り返しても伝わらない
- 「責任者を出せ」と言われた
「担当の者と一緒にご対応させていただきます」と一言。下がる判断は逃げではなく、患者さんの満足のためでもあります。
下がるときの動き方
10年以上の現場で身につけた「逃げ方」をまとめますね。
「上の者を呼ぶ」は最強の撤退カード
経験的に、若手スタッフ1人が10分話すより、管理職が3分話す方が収まることが多いです。これはスタッフが力不足なのではなく、相手が「組織として対応している」と感じるからです。1人で頑張りすぎないでください。
⑨終わったらすぐ上司に報告
報告は5W1Hで30秒。
「14時頃、◯◯科の受付で△△さん(70代男性)から、前回と会計金額が違うとのクレームがありました。原因は加算項目の変更で、私はその場で説明できなかったので、医事課長に引き継ぎました。記録はメモ帳に残してあります」
このテンプレを覚えておくと、混乱時でも報告がぶれません。
⑩記録を残す
日時・場所・患者氏名・発言要点・対応内容・引き継ぎ先を、その日のうちに記録します。再来時に同じ患者さんが来たとき、引き継ぎの基礎資料として役に立ちます。
クレーム対応で使えるフレーズ集
実際に使えるフレーズをまとめます。
相手別に覚えておくと、頭が真っ白になった瞬間でも体が動きます。
「申し訳ございません」は便利ですが、繰り返すと事務的に響きます。気持ちの方を受け止めるフレーズに変えるだけで、相手の表情が和らぐはずです。
「お待ちください」だけだと突き放された印象になりかねません。自分が動く主語で返すと信頼が戻ります。
患者さんの怒り6段階別|想定セリフと返し
クレームには温度差があります。レベルを見極めて言葉を選ぶと、不要な炎上を避けられますよ。
レベル1|疑問
患者さん:「この点数って何ですか?」
私:「ご質問いただきありがとうございます。〇〇の検査分でして、今すぐ内訳を確認してまいります」
落ち着いて、聞かれた質問にだけ答えます。先回りして謝らないほうが好印象です。
レベル2|不満
患者さん:「待ち時間が長すぎませんか?」
私:「ご事情お察しします。現在2時間前後お待ちいただいている状況です。途中で外出もできますので、お声がけください」
共感+代替案をワンセットで返します。
レベル3|苛立ち
患者さん:「いつまで待たせるの?」
私:「お待たせして申し訳ございません。お話、最後までお伺いさせてください。今、診察の進み具合を確認してまいります」
説明より傾聴が先。一度受け止めてから動きます。
レベル4|怒り
患者さん:「ちょっと、責任者呼んでください!」
私:「おっしゃる通りです。すぐに上の者を呼んでまいります。場所を変えてお話を伺ってもよろしいでしょうか」
レベル4以上は1人で抱えない。これが鉄則です。別室への誘導は、他の患者さんを守る意味もあります。
レベル5|攻撃
人格否定・脅しが出てきたら、こう返します。
私:「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。お話の続きは上の者と一緒にお伺いさせてください」
レベル5からは記録開始です。日時・場所・要求内容を箇条書きで残します。録音・録画・記録の3点セットを職場のルールに沿って準備します。
レベル6|暴力的行為
物を投げる・身体接触・破壊行為が出たときの行動の核です。
- 自分と他患者さんの安全確保が最優先
- 速やかに上司・警備に連絡
- 必要があれば110番をためらわない
- 後刻、対応者全員で記録を突き合わせる
「医療事務だから我慢しなければ」は通用しません。組織として線を引く判断です。
言い返さずに線を引く3つのフレーズ
レベル3を超えてきたときに、私が使ってきたフレーズです。声に出して練習しておくと、いざという時に出やすくなりますよ。
フレーズ① 感情を受け止めつつ、土俵に乗らない
「お辛いお気持ちは分かりました。ただ、その大声では正確なお話が伺えません」
ポイントは、相手の「感情」は否定しないこと。でも「大声」は行動です。そこには線を引きます。
ボクシングのリングに上がらず、レフェリーの立場で話すイメージです。感情の殴り合いに参加した時点で、こちらが消耗するだけ。リングの外から冷静に対応する。
フレーズ② 「私が嫌」ではなく「ルールです」
「当院の規定により、他の方のご迷惑になる行為が続く場合は、診察を中断せざるを得ません」
「私が嫌だからやめてください」と言うと、個人 vs 患者の構図になりがちです。
でも「当院の規定により」と言えば、組織 vs 問題行動の構図に変わる。
個人戦から組織戦に持ち込む。これだけで、心の負担が全然違います。「私一人で戦わなくてよかったんだ」と気づいたとき、気持ちが楽になりました。
なお、診察を断れるかどうかは医師の応召義務とも関わり、状況によって判断が分かれます。緊急性の有無や個別ケースの線引きは、院内の管理職や顧問の専門家に確認しておくと安心です。
フレーズ③ 記録を伝える「抑止フレーズ」
「正確な事実確認のため、ここからは記録を取らせていただきます」
「記録が残る」と知ると、私が見てきた範囲では落ち着きを取り戻す人が多かったです。これは脅しではなく、お互いを守るための手続きです。
記録すべき項目
- [ ] 日時=◯月◯日 ◯時◯分
- [ ] 場所=受付・診察室・電話など
- [ ] 相手の氏名・カルテ番号
- [ ] 発言内容=できるだけ原文で
- [ ] こちらの対応
- [ ] 周囲にいた職員=証人になる人
- [ ] 自分の感情・体調変化
電話のクレームは別物として準備する
窓口と電話は、同じクレームでも性質が違います。
電話クレーム特有の3つの注意点
- 保留は30秒以内。それ以上はかけ直す
- 相手の名前を最初に確認。「失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいですか」
- 要点をメモしながら復唱。「〇〇ということで間違いないでしょうか」
電話は表情が見えないぶん、声のトーンが7割を決めます。少し低めの落ち着いた声を意識するだけで、相手の興奮も自然に落ち着いていくものです。
電話で使える定番フレーズ
- 「お電話ありがとうございます、〇〇病院でございます」
- 「お話を正確に伺いたいので、確認させていただきます」
- 「本日17時までに、こちらから折り返しお電話させていただきます」
「後ほど」を「17時までに」に変えるだけで、相手の不安が下がりますよ。
怒鳴り声が止まらない電話は、「お話を伺いたいのですが、その声では聞き取れません。一度切らせていただきます」と伝えて、一旦切ってOKです。
切った後すぐに記録を取り、上司に共有してください。
上司報告テンプレ(コピペ可)
報告漏れを防ぐためのテンプレです。メモ帳に貼り付けて使ってください。
【クレーム対応報告】
日時:◯月◯日 ◯時◯分
場所:◯◯科受付
対応者:◯◯(自分)
患者:◯◯さま(◯代・性別)
状況:◯◯のクレーム
発言要点:「◯◯」「△△」
私の対応:◯◯
現在の状況:解決済/継続対応中/引き継ぎ済
次のアクション:◯◯
記入するとこうなります。
【報告テンプレート 記入例】
日時:◯月◯日 ◯時◯分場所:1階受付相手:カルテ番号◯◯◯◯◯ 氏名◯◯様
内容:待ち時間の苦情から始まり、「お前の説明が悪い」「責任者出せ」と大声。約15分継続。
対応:①「大声では伺えない」と伝達→継続。②「上の者を呼ぶ」と伝え◯◯主任が対応引継ぎ。
周囲:受付◯◯さん同席。待合室の他患者3名から視線あり。
今後の希望:①再来時の対応方針を院内で統一していただきたい。②カスハラ対応マニュアル該当事案として記録願います。
事実を数字で並べるのがコツです。「怖かった」に加えて「15分継続」と書く。これだけで上司が動きやすくなります。
知っておきたい「よくある勘違い」
クレーム対応について、現場でよく見られる誤解をまとめます。
カスハラとクレームの線引き
すべての苦情がカスハラではありません。線引きの感覚を持っておくと、自分を責めずに済みますよ。
カスハラのサインは「声のトーン上昇」「人格攻撃」「同じ要求の反復」「30分以上の拘束」「身体的脅威」など。1つでも該当すれば、組織として対応するときです。
合理的な解決を求めていない人のサイン
総合病院10年以上の現場で、年に数回は出会うのが「合理的な解決を求めていない」タイプの人です。
- 同じ要求を何度も繰り返す(解決を求めていない)
- 個人の家族や容姿を攻撃する
- 「訴える」「ネットに書く」と脅してくる
記録の取り方も決めておきます。
- 日時・場所・対応者・要求内容を箇条書きで残す
- 上司・院長・場合によっては顧問弁護士へ即共有
- 防犯カメラの該当時間を保存依頼
- 対応の翌日までに、対応者全員でメモを突き合わせる
元採用担当の本音「優しく対応すれば収まる」は通用しません。組織として線を引くことが、結果的に他の患者さんを守ります。
怒鳴られた後に自分を責めないための考え方
怒鳴られた日の帰り道、ぐるぐると考え続けることがあります。
「もっとうまく言えたのではないか」「自分の何かが悪かったのではないか」
この気持ちはとても自然なものです。でも、考え続けることが必ずしも次に生かされるわけではありません。
駐車場でエンジンをかけられなかった日
私も何度もあります。待ち時間が長引いた日の午後、順番を飛ばされたと思い込んだ患者さんに、カウンター越しで30分近く責められたこともあります。
総合病院に勤めていた頃、待ち時間に怒った患者さんにカウンター越しに指を突きつけられました。「いつまで待たせるんだ!」「お前の説明が悪いんだろ!」
心臓がバクバクして手が震えて、それでも「申し訳ございません」と頭を下げました。仕事が終わったあと、駐車場の車の中でしばらくエンジンをかけられませんでした。
「こんな目に遭うのは、自分の対応が悪いからだ」
あの頃の私は、本気でそう思っていました。今なら違うと言えます。窓口を離れたあとも、家に帰って夕飯を作りながら、あの時こう返せばよかったと同じことを何度も再生していた時期があります。
「怒鳴られた皆さま」が悪かったわけではない
先ほど書いたように、クレームの多くは構造的な問題が原因です。
病院に来る患者さんは、体の不調や不安を抱えています。「待たされたこと」が引き金になったとしても、その奥には「病院に来なければならない状況への怒り」があることが多い。
皆さまは、その怒りの出口になっただけかもしれません。
私が2年目のとき、はじめて本気で怒鳴られた日の夜、先輩から一言もらいました。
「それ、ゆうのせいじゃないよ」
その言葉が、今でも残っています。
相手の怒りを、全部自分のせいにしない
総合病院にいた頃の私は、怒鳴られるたびに「自分の対応が悪かったのかな」「もっと上手にやれたはずだ」と、全部を自分のせいにしていました。反省の材料が見つからない日でも、探してしまう。
そんな癖がついていました。
患者さん自身の体調不良や不安、恐怖が、「怒り」の形で出てくることもあります。
体がつらい時は、誰でも余裕がなくなりますよね。怒りの奥には、受付の外の事情が隠れていることもあります。受付の対応だけが原因とは限りません。
「相手の怒りを、全部自分のせいにしなくていい」
この考え方を「デタッチメント(心理的距離)」といいます。冷たいわけではありません。明日も受付に立ち続けるための技術です。
怒鳴られた日のあと、眠れない・動悸がする状態が続く時は、我慢せず職場の産業医や保健師、かかりつけ医に相談してください。
心の整え方|帰宅後の5分ルーティン
10年続けてきた中で、自分なりに整えた5分ルーティンを紹介します。

- 帰宅したら靴を脱ぐ前に深呼吸を3回
- シャワーで湯を浴びる(5分でいい)
- その日の対応を1点だけメモに残す
- メモを閉じたら仕事のことは考えない
- 温かい飲み物を一杯飲む
私は片道50kmを高速で通勤していた頃、運転中にぐるぐる考え続けてしまい、家に着いてもしんどさが抜けませんでした。
途中から音楽や音声配信に切り替えたところ、家に着いた時の気持ちがはっきり変わりました。家に着く前にコンビニで温かい飲み物を買って、5分だけ座る日も。
「家に入ったら仕事終わり」というスイッチを作ったら、翌朝の重さが半分くらいになりました。
5分ルーティンのほかに効いたこと
- 同僚に「聞いてもらうだけ」を頼む。解決策は要りません。「今日こんなことあって」を1〜2分話すだけで、感情の置き場ができます。
- 完璧を目指さない。「もっと上手く返せたかも」は誰でも思います。60点で十分です。
- 翌朝のルーティンを確保する。朝6時起き・コーヒー・身支度。「いつも通り」が一番効きます。
それでも1週間以上引きずる場合は、産業医・院内カウンセラー・地域の精神科に相談してください。
「反省」と「自責」は違う
振り返るときは「次回、どの瞬間に別の行動ができたか」を1点だけ考えます。1点だけでいいです。
完璧な対応なんて、10年経験したベテランでもできないことがあります。
「今日も受付に立てた」で十分
「今日、受付で10人の対応ができた。1人に怒鳴られたけど、9人の対応はできた」
そう考えてみてください。
怒鳴られた1件だけを一日の評価にしないことが、長く働き続けるために大切です。
クレームが多い職場に限界を感じたら
毎日のようにクレームがある職場にいる。そんな人もいると思います。
クレームが多い職場には、大きく分けて2つのパターンがあります。
毎日怒鳴られるような職場で働き続けることは、精神的に消耗します。それは医療事務が向いていないのではなく、その職場の環境が問題である可能性があります。
公的な相談先も知っておくと安心です。
私も転職サービスを使ってフルリモートの職場に出会いました。動く前に「今の職場より条件が良い求人があるかどうか確認する」だけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
レセプト中心の職場や、フルリモート医療事務に転職する選択肢もあります。私自身、窓口を離れてから精神的な余裕が戻りました。
詳しくは医療事務のフルリモート求人|サイト3つを元採用担当が比較を読んでみてください。
クレーム対応の経験は、窓口を離れても残る
クレーム対応で身につく傾聴力・共感力・問題解決力は、医療事務に限らず一生使える武器です。
私自身、現在はフルリモートで算定業務をしていますが、社内のテキストコミュニケーションでもこのスキルが活きています。窓口でクレームを受けてきた経験は、確実にキャリアの財産です。
怒鳴られた日に思い出したい話
クレーム対応の上手な人は、感情が動じないのではなく「手順」を持っているから冷静に動けます。
怒鳴られることに慣れる必要はありません。「こう動けばいい」という手順を体に覚えさせることが、長く医療事務を続けるための一つの方法です。
よくある質問(FAQ)
Q1:怒鳴られているとき、言葉が出なくなります。どうすればいいですか?
気持ちが動揺することは自然なことです。その場では深呼吸をしながら相槌を打つことに集中してください。
事前に先輩へ「怒鳴られると言葉に詰まる」と話しておくだけで、フォローに入ってもらいやすくなりますよ。
Q2:他の患者さんが見ているときにのクレーム、どう対応すればいいですか?
早めに「場所を変える」動作をしましょう。「少し静かな場所でお話しさせてください」と声をかけて移動することが、周囲への影響を最小化する最善手です。
Q3:謝罪してはいけないのですか?
謝罪自体は必要です。ただし、いつ言うかで結果が変わります。感情のピーク中に謝罪や説明を入れると逆効果になることがあります。
相手が少し落ち着いてきてから「大変なご不便をおかけしました」と入れるのが効果的です。
Q4:先輩を呼ぶタイミングがわかりません。
「自分では対応できないと感じた瞬間」が呼ぶタイミングです。10分経っても状況が落ち着かない場合や、怒鳴り声が大きくなっている場合は迷わず先輩を呼んでください。
Q5:クレームのあった日は引きずってしまいます。どうすればいいですか?
引きずること自体は自然です。対処法として「次回このときにどう動けばよかったか」を1点だけ考えて、メモするとよいです。それ以上は考えない。
振り返りを1点に限定することで、反省が自責に変わるのを防げます。
Q6:怒鳴る患者さんが怖くて、その気持ちが消えません。
怒鳴られることに慣れる必要はありません。怖いと感じることは正常な感覚です。「手順」を覚えれば、怖いままでも行動できるようになります。
Q7:毎日クレームがあって、仕事が嫌になっています。転職すべきですか?
毎日クレームがある状態は、個人スキルの問題よりも、職場環境の問題であるケースが少なくありません。一度転職サービスで「今の職場以外の選択肢」を確認してみることをおすすめします。
Q8:暴言・暴力寸前の場合、警察を呼んでもいいですか?
身の危険を感じた場合は、迷わず110番してください。これは個人の判断で問題ありません。
そして2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。改正された労働施策総合推進法の第33条です。
国が挙げた「顧客等」の例に、病院の利用者がはっきり入っています。記事の後半に条文と厚生労働省の一覧を載せました。
詳しくは医療事務のカスハラ対策記事も見てみてください。
Q9:録音してもいいですか?
自分を守るための録音は、一定の証拠性が認められるケースが多いです。ただし扱いには慎重さが必要なので、上司や労働相談窓口にも相談してください。
Q10:電話で「お名前は?」と詰められた時の対応は?
職場のルールに従いますが、フルネームではなく「〇〇(苗字のみ)が承りました」が一般的です。事前に上司と「どこまで名乗るか」を確認しておくと安心です。
Q11:SNSや口コミに悪く書くと脅されたら?
その場では反応せず、内容を正確に記録し、上司・広報・必要なら顧問弁護士に共有してください。動揺を見せないのが一番の対処です。
Q12:怒鳴られた直後に次の患者さんを呼ばないといけない時は?
深呼吸を3回してから呼んでください。表情筋を一度ゆるめる動作を入れるだけで、次の患者さんへの第一声が変わります。
Q13:上司に報告しても「うまくやれ」と言われるだけです。
今のうちに「記録を残しておくこと」を習慣にしておきましょう。記録があれば、後から組織に動いてもらいやすくなります。
本記事の「報告テンプレート」の形で出すと、感情論にされにくいです。組織として線が引けない職場は、長期的にスタッフを消耗させるものです。
記録を残しつつ、転職を視野に入れる判断もあります。
Q14:フレーズを使ったらもっと怒らせてしまいそうで怖いです。
最初は「組織の言葉」を使うのが安全です。「当院の規定により」この一言は、個人ではなく組織として対応していることを示します。
個人戦にしないことで、多くの場合、相手も落ち着きます。
Q15:患者さんへの対応だから我慢するしかないですよね?
そんなことはありません。医療は「患者さんを助ける場所」ですが、スタッフが壊れてしまっては患者さんも助けられません。自分を守ることは、患者さんへの良い医療を続けるためにも必要です。
Q16:クレーム対応の翌日、職場に行くのがつらいです。
無理しないでください。1日有給を取って整える方が、結果的に長く働けます。
1回のクレームで辞める判断は早すぎますが、何度も同じことが続くなら職場環境そのものを見直す合図です。
原文|2026年10月1日からのカスハラ対策義務
「病院として組織で対応する」が、来月から法律の義務になります。条文と国の資料を、書き換えずに載せますね。
① 条文そのもの(労働施策総合推進法 第33条)
第1項と第2項を続けて載せます。
事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(次条第五項において「顧客等」という。)の言動であつて、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この項及び次条第一項において「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第33条第1項・第2項・令和8年10月1日施行/法令検索で見る/2026年9月16日に利用
読みにくい文ですが、大事なのは末尾の「講じなければならない」という言い方。努力目標ではありません。
第2項では、相談したことを理由に不利益な扱いをしてはいけない、とも書かれています。
② 病院は名指しで入っています
【①顧客等とは】
顧客、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある者も含む)
出典:厚生労働省 リーフレット(詳細版)令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます/資料を見る/2026年9月16日に利用
同じ資料には、苦情のすべてがカスハラになるわけではない、という但し書きもあります。線を引いているのは「社会通念上許容される範囲を超えたもの」かどうか。
③ 病院が10月から必ずやること

出典:同じリーフレットの2ページ/資料を見る/2026年9月16日に利用・該当部分だけ切り出し/画像はタップで拡大
太字になっている⑧が、他のハラスメント対策には無い項目。「一人で対応させない」「警察へ通報する」が国の例として並んでいます。
自分の病院にこの10項目があるか。無ければ、10月以降は整備されていない状態になります。この画面を上司に見せるところから始めてもいいはずです。
④ カスハラの3つの要素
厚生労働省の別の資料には、カスハラの定義と「顧客等」の範囲がまとまっています。
カスタマーハラスメントとは、職場において行われる
① 顧客等の言動であって、
② その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
「顧客等」とは
顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある者も含む) 、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む)、その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者をいいます。
出典:厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策」7ページ(2026年9月18日確認)
同じページの留保も載せます。
顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正式な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たりません。
出典:同資料7ページ(2026年9月18日確認)
怒っている人が全員カスハラ、ではありません。線を引くのは「社会通念上許容される範囲を超えたか」でした。
⑤ 講ずべき措置を病院に置き換えると
事業主が講じなければならない措置は、厚生労働大臣の指針(カスハラは令和8年厚生労働省告示第51号)に4つの項目で定められています。
事業主が雇用管理上講ずべき措置
■ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
■ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
■ ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
■ 併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
※ このほか、カスタマーハラスメントについては、その対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置が含まれます。
出典:厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策」23ページ(2026年9月18日確認)
病院に置き換えると、こうなります。
今のうちにやっておくこと自分の病院が2026年10月までに「相談窓口」「マニュアル」「研修」を準備しているか、人事や上司に確認してみてください。「うちはまだです」という返答なら、それ自体が問題です。
法令・告示・通知は著作権法13条で著作権の対象になりません。厚生労働省ホームページの資料も、出典を書けば転載してよい決まり。だから要約せず、そのまま載せています。
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■ 著者プロフィール
総合病院で医療事務10年以上、うち3年間は元採用担当として多くの方を面接。受付・会計・マネジメントを経験し、クレーム対応に関しては数え切れないほどの経験を積んできました。
現在はフルリモートで算定業務をしながら、3人の子どもを持つ父として働いています。「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるために発信中。
最終更新日:2026年9月23日