「健診と一緒に、いつもの薬も出しておきますね」
特定健診の日に、定期処方も一緒に済ませる患者さん。珍しくありません。
会計のときに迷うのはここから。再診料は取っていいのか、採血は健診の分と保険の分をどう分けるのか。職場によって答えが違って見える、あのときですね。
先に答えをお伝えすると、「健診として実施した内容と同じ範囲を、保険でもう一度算定していないか」を確認するのが基本です。同日に何を実施したかで済むかどうかが決まる話で、「同日実施そのものの可否」を判断することではありません。
今やることその日に実施した検査・処置を、健診用と保険用に分けて紙に書き出す。
令和6年12月、公式に決着した論点
まず、いちばん核心の部分から。
厚生労働省が令和6年12月6日に出した疑義解釈資料(その16)に、この論点がそのまま載っています。
問 保険医療機関が実施する健康診断を受診する患者について、健康診断の同一日に当該保険医療機関において、1回の受診で保険診療を行う場合は、再診料を算定することは可能か。
(答)保険診療として治療中の疾病又は負傷に対する医療行為を、健康診断として実施する場合は、再診料を算定できない。
読み方に迷うので、噛み砕いてみましょう。健診の中の「血圧を測る」「問診する」という行為が、治療中の病気の診察とそのまま同じ中身だったとします。
その部分に、もう一度再診料は乗せられません。
健診と診察、両方の名目で同じ行為に点数を付ける状態になるためです。
逆に言うと、健診とは別に、独立した診察を実施していれば再診料は算定できます。「ついでに済ませた」のか「別に診た」のか――ここが分かれ目です。
初診料のほうは、同じ資料の問1。こちらも原文で見てみます。
問1 自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合は、「A000」初診料を算定できるか。
(答)不可。ただし、健康診断で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除く。)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる。
出典:同資料 別添1 医-1
この問1には(参考)がついていて、留意事項通知の該当箇所がそのまま引かれています。
(参考)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月5日保医発0305 第4号)(抜粋)
(4) 自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合には、初診料は算定できない。ただし、当該治療(初診を除く。)については、医療保険給付対象として診療報酬を算定できること。
(5) (4)にかかわらず、健康診断で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除く。)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる。
出典:同資料 別添1 医-1 の(参考)
読むと、落としやすい条件が2つ。
2つ目が要注意。同じ病院の別の先生では算定できません。院内で振り分けても取れない、ということ。
何が二重になりやすいか
再診料以外にも、重なりやすい項目があります。実施した内容を並べて、順番に見ていく形にします。
①診察そのもの
健診の問診・視診と、保険診療の診察が同じときに行われた場合。上の疑義解釈がそのまま当てはまります。
「本日は健診と一緒に、いつものお薬のご相談もありましたね」
これで伝わるはずです。「今日は2つのことをしている」と。会計時の説明もスムーズです。
②採血の手技料
特定健診の検査項目に採血が含まれています。同じ採血で、健診用の項目と保険診療用の項目を一緒に測ることは実務上よくあります。
この場合、採血という行為そのものは1回。手技料を両方から二重に取ることはできません。健診の実施要領に含まれる範囲かどうかで、保険請求できる部分が決まってきます。
③検査の判断料
血液検査の結果を読む判断料も、考え方は同じ。健診の項目と保険診療の項目が同じ検査で、健診側の費用にすでに判断料相当が含まれている場合、保険側でもう一度は算定できません。
「今日の採血は、健診の分とお薬の確認の分、まとめて1回で終わりますね」
実施要領は、保険者ごとに決まっている
もうひとつ、見落としやすい前提。特定健診の実施要領は、保険者(健康保険組合や協会けんぽ、市区町村国保など)ごとに決められています。
つまり、「健診の費用にどこまで含まれるか」は院内のルールだけでは決まらないということ。実施している保険者の要領を確認するのが確実です。
自治体が実施主体のがん検診なども同じで、自治体ごとの要領が優先します。
迷った時は、健診担当の窓口か、実施要領そのものにあたるのがいちばん早道です。
予防接種と診察も同じ考え方
予防接種は保険診療ではなく自費です。診察と予防接種を同日にした場合、保険で算定するのは診察の部分だけ。それが基本の整理です。
予防接種そのものの手技や薬剤費は自費で計算し、レセプトには載せません。院内で会計を分ける処理が要るので、レジや会計システムに自費分が紛れ込んでいないか、時々見直すと安心です。
診察の内容が予防接種の問診だけで完結していれば、①と同じ考え方です。定期処方など独立した診察も同時に行っていれば、そちらの分の再診料は算定できます。
摘要欄に残す一言
保険で算定した部分と、含めなかった部分。どちらも記録に残しておけば、後から見直す時に迷いません。
「特定健診と同日実施のため、健診に含まれる採血手技料・判断料は算定していません」
このひとことがあるだけで、返戻や照会が来た時の説明が楽になります。
会計前に確認する順番
窓口で迷わない順番。3つです。
- その日に実施した内容を、健診用と保険用に分けて書き出す
- 同じ行為(診察・採血・判断料)が両方に重なっていないか照合する
- 重ならない分だけを保険で算定し、除いた理由を摘要欄に残す
この順番さえ守れば、入口の疑問(同日にやっていいのか)ではなく、会計の実務(何を二重に取らないか)として片づきます。
私が新人の頃、混乱していたこと
総合病院で医療事務を10年以上やってきて、健診と保険診療が重なる日は今でも緊張します。
新人の頃は「健診の日は保険を触ってはいけない」くらいに思い込んでいました。実際は逆。
重なる部分だけ気をつければ、あとは通常どおり算定できます。思い込みで会計を止めるより、重なる3項目の確認のほうが早く終わりますよ。
私は現在フルリモートで算定業務を担当していますが、健診の実施要領は保険者ごとに細部が違うもの。初めて扱う保険者の分は、要領を開くところから始めます。
算定の点数と条件そのものは、算定ナビから公式資料で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 健診の結果を後日聞きに来て、そこで病気が見つかった場合の再診料は?
健診の当日ではなく別の日の受診なので、この疑義解釈の対象外です。通常どおり初診料または再診料を算定します。
Q. 特定健診とがん検診を同じ日に実施した場合は?
実施主体が特定健診と別(自治体のがん検診など)なので、この記事とは別の照合が必要です。両方の要領を並べ、検査項目が重なっていないかだけ見ます。
Q. 健診の項目に入っていない検査を、同日に保険で追加した場合は?
含まれない検査なら、通常どおり保険で算定できます。境目を判断できない時だけ、実施要領へ戻ってください。
Q. 摘要欄のコメントは決まった書式がありますか?
決まった書式はありません。何を、なぜ含めなかったかが読めれば十分です。
Q. 院長の指示で、二重に算定している場合はどうすれば?
判断するのは会計の担当者ではなく医療機関側ですが、公式の疑義解釈で「算定できない」と明記されている論点です。
院内で確認してもらう材料として、この記事の一次資料を共有するのも一つの方法です。
二重を防ぐために
- 再診料は「別に診たか」が基準:健診と同じ行為の焼き直しには算定できません
- 採血と判断料も同じ考え方:健診の実施要領に含まれる範囲を確認します
- 除いた理由を摘要欄に残す:後から見直す時の説明が楽になります
同日実施そのものは、珍しいことではありません。確認するのは、同日にしていいかどうかではなく、何が重なっているか。健診の伝票と保険の伝票を並べて置くところから始めてみてください。
保険証まわりの基本は、無料の受付で固まらない制度早見表PDFにもまとめています。
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出典・参考
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その16)」令和6年12月6日事務連絡・別添1 医-1(PDF)|問1=初診料と(参考)の留意事項通知、問2=再診料/2026年9月18日に原文を再確認
■ 著者プロフィール3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1つで元採用担当を3年。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。
最終更新日:2026年9月18日