先に答えをお伝えすると、続けるか迷っている時は、求人票を開く前に「譲れない条件」を5項目だけ書き出すほうが、迷いが減ります。 求人を先に見ると、目に入った条件に自分を合わせてしまうからです。

今やること今夜は紙1枚に、下の5項目を「譲れない・できれば・不要」に分けて書く。
▼ 5項目を書き出す

3つの総合病院で医療事務を10年以上。そのうち3年は、採用する側で面接をしていました。働く側と採用する側、両方の立場から「求人票の前にやること」を順番にまとめます。

この記事に、有料の案内はありません。書き出して、今の職場に残る結論になっても、それは成功です。

この記事でわかること

  • 求人票を先に見ると、なぜ迷いが増えるのか
  • 求人を見る前に書き出す5項目と、「絶対・できれば・不要」の分け方
  • 書き出した条件を、求人票のどこで確認するか=元採用担当の視点
  • 続ける結論になった時の、次の一手
  • 迷うより先に、相談したほうがよいサイン
  • 条件がうまく分けられない時のFAQ

求人票を先に見ると、迷いが増える理由

理由は1つ。求人票は、病院側が見せたい条件の順に並んでいるからです。

私も元採用担当として、求人票の文面を何度も直しました。上のほうに書くのは、応募が集まる言葉。通勤や残業の実態は、下のほうか、面接で聞かれた時に答える項目でした。

その並びで読むと、読み手は「給与はこのくらいか」「未経験歓迎なら私でも」と、病院の物差しで自分を測り始めます。

自分の物差しが先にあれば、逆になります。求人票を「自分の条件に合うか」で読めるので、合わないものは迷わず閉じられる。

だから、書き出すのが先。

求人票を先に見る時と、自分の条件を先に書く時の違い

求人を見る前に書き出す5項目

紙でもスマホのメモでも構いません。5項目それぞれに、いまの職場の実態と、自分の希望を並べて書きます。

01|時間|通勤・残業・休み

最初に書く項目は、時間です。給与より先に書く理由は、時間だけは後から増やせないから。

書く項目は3つ。片道の通勤時間、月の残業のだいたいの時間、休みの取り方です。休みは、土曜出勤の有無と有休の取りやすさを見ます。

私の場合、片道約50kmの高速通勤を7年続けました。給与に不満はなくても、毎日の運転時間が家族との時間を削っていた。ここに気づいたのが、働き方を選び直す起点でした。

02|お金|手取りの下限・手当

お金は「いくら欲しいか」ではなく、「これを下回ったら生活が回らない」という下限で書きます。

月の手取りの下限、賞与の有無、通勤手当や住宅手当の扱い。この3つがあれば足ります。

給料がすべてではありません。ただ、下限を決めずに求人を見ると、上のほうに書かれた金額に引っぱられます。下限は、自分を守るための線です。

03|身体と心|負担・呼び出し・夜間

立ちっぱなしの受付か、座って算定か。夜間や休日の呼び出しはあるか。月末月初のレセプト期間に、どのくらい消耗するか。

ここは正直に書きにくい項目ですよね。「体力がない」と認めるようで、つい強気に書いてしまう。

書き方のコツは、事実だけにすること。「レセプト期間の最終週は帰宅後に何もできない」のように、起きていることを書けば、強気も弱気も入りません。

04|仕事の中身|受付・算定・レセプト・教育

医療事務は、ひとつの仕事ではありません。受付、会計、算定、レセプト点検、入院係、教育係。病院の規模で、担当の分かれ方も変わりますよね。

いま担当している業務のうち、続けたいものと、やめたいものを分けて書きます。

「医療事務を辞めたい」と思っていても、書いてみると「受付は続けたいが、教育係が重い」のように、辞めたいのは仕事の一部だけ。そんな場合もあります。

ここが分かると、転職しなくても解決する道が見えることも。

05|家族と生活|保育・行事・在宅の可否

最後に、家族と生活。保育園の送迎、学校行事、親の通院、在宅で働ける可能性。

私は3児の父なので、この項目が実質の「絶対条件」でした。フルリモートで算定業務に移ったのも、通勤時間を家族に戻すためです。

ひとり暮らしの時も、私はここを空欄にしませんでした。「夜は自分の時間を確保したい」も、立派な生活の条件です。


書き出したら「絶対・できれば・不要」に分ける

5項目を書いたら、それぞれを3つに分けます。

  • 絶対:これが守れない求人は、条件が良くても閉じる
  • できれば:あれば嬉しいが、なくても応募はできる
  • 不要:他の人は気にするが、自分は気にしない

コツは、絶対を3つ以内に絞ること。全部が絶対になると、当てはまる求人がゼロになり、また迷いに戻ります。

もう1つ。各項目に、自分の言葉で理由を1行だけ添えてください。

「通勤30分以内。子どもの迎えに間に合わないから」のように書いておくと、転職サービスの担当者や家族に何か言われても、自分の軸に戻れます。


求人票のどこで確認するか|元採用担当の視点

書き出した条件を、求人票と面接で確認する場所を分けておきます。

項目 求人票で見る場所 面接で確認すること
時間 勤務時間・休日欄・「残業月平均」の有無 レセプト期間の実際の退勤時刻
お金 基本給と手当の内訳・賞与の記載 手当の支給条件
身体と心 業務内容の書き方が受付中心か算定中心か 夜間・休日の呼び出しの有無
仕事の中身 「業務内容」の並び順。最初に書かれたものが主担当 入職後の担当と、教育の進め方
家族と生活 在宅・時短の記載、育児中の職員の有無 急な休みの取り方

求人票に書かれることは、法律で決まっています

もうひとつ、知っておくと求人票の見え方が変わることがあります。載せる項目は、募集する側が自由に選んでいるわけではありません。

職業安定法の第5条の3、第1項です。

公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

出典:職業安定法/政府の法令検索サイトで2026年9月18日に確認

末尾は「明示しなければならない」で、その中身は施行規則に一覧がありました。

法第五条の三第四項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。ただし、第二号の三に掲げる事項にあつては期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものに限る。以下この項において「有期労働契約」という。)に係る職業紹介、労働者の募集又は労働者供給の場合に限り、第八号に掲げる事項にあつては労働者を派遣労働者(労働者派遣法第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)として雇用しようとする場合に限るものとする。
一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項(従事すべき業務の内容の変更の範囲を含む。)
二 労働契約の期間に関する事項
二の二 試みの使用期間に関する事項
二の三 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
三 就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。)
四 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項
五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項
六 健康保険法(大正十一年法律第七十号)による健康保険、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)による厚生年金、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)による雇用保険の適用に関する事項
七 労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項
八 労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨
九 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項

出典:職業安定法施行規則 第4条の2第3項/政府の法令検索サイトで2026年9月18日に確認

一号に「従事すべき業務の内容の変更の範囲を含む」、三号に「就業の場所の変更の範囲を含む」とあります。

今の仕事と勤務地だけでなく、将来どこまで変わりうるかまで書くことになっています。

医療事務で言えば、受付から算定へ、外来から病棟へ、分院へ。異動の幅が求人票に出ているかどうか。ここは「仕事の中身」と「家族と生活」の両方に効いてきます。

九号の受動喫煙の措置も入っています。意外に思うかもしれませんが、職場環境の情報として並んでいました。

求人票に書いていないことは、聞いてよいです。書いていないのは、隠しているからとは限りません。書く欄が足りず、載せきれていないだけのこともあります。

聞き方は、条件を突きつける形でなく、自分の状況を先に伝える形が通ります。

面接で確認する時のひとこと
「レセプトの時期は、皆さんどのくらいの時間まで残られていますか」

家族の事情を伝える時のひとこと
「子どもの体調で急に休む日が出ることがあります。そうした時の調整は、どのようにされていますか」

質問に時間や金額の希望を混ぜると、答えがぼやけてしまいます。まず実態を聞き、自分の条件と照らすのは帰ってから。


続ける結論になった時の、次の一手

書き出してみて、「絶対条件は、いまの職場でも守れている」と気づく人は少なくありません。

続ける結論になった時の流れ:正体を1項目に絞って相談する

その場合、辞めたい気持ちの正体は、5項目のどれか1つに寄っています。仕事の中身なら担当の相談、時間なら残業の実態の共有。1項目に絞って、上司や先輩に伝えるほうが通ります。

転職しない結論も、成功ですよ。書き出した紙は、半年後にまた見返してください。条件が変わっていなければ、その時にまた考えればよい。


迷うより先に、相談したほうがよいサイン

次のどれかに当てはまる時は、条件の整理より先に、安全の確保と相談を優先してください。

  • 眠れない、食べられない日が続いている
  • 人格を否定される言葉を、繰り返し受けている
  • 残業代が支払われていない、休憩が取れない

相談先は、職場の外にも。

厚生労働省の「こころの耳」(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)と、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、無料で使えます。

条件の整理は、身体と心が回復してからで間に合います。


よくある質問(FAQ)

Q. 書いてみたら、どれも譲れない条件になってしまう時は?

生活が回らなくなる条件、つまりお金の下限と家族の事情は、そのまま残してください。下げてよいのは迷っている項目だけ。

いちばん困っている1つを「絶対」に置き、残りを「できれば」にすると、求人票がぐっと読みやすくなります。

Q. 未経験で入って1年未満です。書き出す意味はありますか?

あります。ただし、1年未満の「辞めたい」は、仕事に慣れていないしんどさが混ざりやすい時期です。

5項目のうち「仕事の中身」を書く時は、覚え切れていない業務と、向いていない業務を分けて書いてみてください。

Q. パートや扶養内で働いている場合は?

「お金」の項目を、手取りの下限ではなく「扶養の上限」で書きます。「時間」は、シフトの融通が利くかどうかを最初に書いてください。

Q. 今の職場で、来年から条件が変わると言われている場合は?

変わる前提で書かず、いまの実態で書いてください。そのうえで「変わったら守れるか」を、別の色で書き足します。約束された変化は、実際に起きてから条件に入れるほうが安全です。

Q. 書き出したら、辞めたくなくなりました。それでいいのでしょうか?

それも、この5項目の使い方の1つです。辞めたい気持ちの正体が1項目に絞れたなら、そこだけを職場に相談する。転職は手段であって、目的ではありません。


求人票の前に、自分の物差しを

  1. 求人票より先に、5項目=時間・お金・身体と心・仕事の中身・家族と生活、を書き出す。病院の物差しで自分を測らないため
  2. 「絶対」は3つ以内に絞り、理由を1行添える。全部が絶対だと、また迷いに戻る
  3. 求人票に書いていないことは、面接で聞いてよい。自分の状況を先に伝える形なら通る

書き出した紙は、続ける結論でも、移る結論でも、同じ価値があります。

迷いが減った分だけ、次の一歩は軽くなるはずです。


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■ 著者プロフィール3つの総合病院で医療事務10年以上、うち1つの病院で採用にも3年携わりました。
片道約50kmの高速通勤を7年続けたのち、転職サービス経由でフルリモートへ。
現在はフルリモートの医療事務として算定業務を担当。3児の父。
「もうひとりで悩まない医療事務」を届けるため発信しています。

最終更新日:2026年9月6日